2008/07/11

もう止まる気ないよなこれ





こうなったらSTSの終わりまで突っ走っちまえ。




Side Alph あたしたちの部屋にたどり着いて、大地はおー、と感嘆の声を上げた。 「へー、結構いいとこに住んでるじゃないか。」 お兄さんびっくりだー、と色々と見ている。 そんなもんなのだろうか?あたしたちは、動物OKであまり人目につかない場所を探しただけなんだけど。 こっちの通貨はよく分からない。まあ、あたしの場合は金自体がわからないんだけどさ。 「ところで二人はもう朝飯食ったのか?」 と、大地が言った。見れば大地はいつの間にかエプロンを身につけ、腕まくりをしている。 「い、いえ、まだですけど・・・。」 「そっかそっか。そんじゃ、俺が腕によりをかけて作ってやるからな。楽しみにしてろ。」 材料は適当に使っちゃうぞー、と言って、大地はキッチンに引っ込んでいった。 ・・・適応早すぎやしないかい?あいつ。

ゴチャマゼクエストSS 『異邦見聞録』 〜麻帆良学園都市・外伝〜

魔法少女リリカルなのは

雷鳴剣と杖

第四話・二人と一匹の新しい日々

Side Fate Testarossa 大地さんの作った料理はそれなりに手の込んだものだった。 塩と胡椒で味をつけたプレーンオムレツ。ベーコンとキャベツを煮込んだスープ。ガーリックトースト。etc。 曰く、『学者の気質で、何かやるととにかく凝ってしまう』らしい。 味もとてもよかった。私は普段あまり食べないのだけど、今日は朝から結構たくさん食べてしまった。 それでも、大地さんは『え、それだけでいいの?』と目を丸くしていたが。 どうやら、彼の周りではもっと食べるのが普通らしい。 食事が終わると、私たちは屋上に上り、『ジュエルシード』の探索をする。 「探索ってどうやんの?」 大地さんが興味津々で聞いてきた。 「広域探索の魔法を使います。それで、大体の位置が特定できるんです。」 私の解説を聞き、大地さんは目を輝かせた。どうやら、魔法を見るのが楽しみで仕方ないようだ。 私はそんな大地さんの姿が、少し可愛いと思った。 「それじゃあ、いくよ。バルディッシュ。」 『Yes, sir.』 バルディッシュが音声を発すると、大地さんが驚いた。そう言えば、大地さんには私たちの使う魔法、ちゃんとは説明してなかったな。 苦笑しながら、私は解説した。 「これが私たちの『魔法の杖』、『デバイス』です。」 「え、杖?でもそれ、アクセサリーじゃ・・・」 答える代わりに、私は 「バルディッシュ、セットアップ。」 バルディッシュを起動する。 金色の光に包まれ、私はバリアジャケットを纏い、バルディッシュは本来の姿になる。 戦斧状のインテリジェントデバイス。それがバルディッシュの本来の姿だ。 「へぇ〜、変身までするんだなぁ。さすが魔法少女。」 ぱちぱちと拍手をする大地さん。・・・ちょっと照れる。 「それじゃあ、これから広域探索の魔法を使いますんで、話しかけないでくださいね。何か聞きたいことがあったらアルフに聞いてください。」 それに大地さんはうなずく。広域探索は結構魔力を使う。解説をする余裕は私にはないのだ。 Side Daichi Ohzora 「バルディッシュ。」 『Wide Area Explore.』 フェイトちゃんの指示に従い、彼女のデバイス『バルディッシュ』が魔法を発動する。 「なるほど、デバイスってのは術の発動体であると同時に、詠唱の肩代わりもしてくれてるのか。」 俺が脳内で瞬時にはじき出した答えに、アルフが少し驚く。 「言っただろ?俺は一応元の世界じゃ天才って称された学者なんだよ。」 「・・・そうだったね。あんたの普段を見てるととても信じられないけど、そういうところ見ると納得させられるよ。」 何だか奥歯にものが詰まったような物言いをしてくれるアルフ。悪かったな。 「けど、ああいうのの方がとっつきやすいだろ?」 「まあね・・・、てまさか、あれは全部演技であんたの計算だったりしないよな。」 「ああ、それはないない。そんな疲れることは俺のすることじゃない。」 そう、それは(私のすること、と言いたいんでしょう・・・)話が早くて助かります、桜井さん。 それを聞き、安堵のため息を漏らすアルフ。 「安心したよ。・・・何だかフェイト、あんたのことは偉く気に入ってるみたいだからね。裏切るような真似だけはしないでくれ。」 うれしいことを言ってくれるアルフ。そうか、フェイトちゃんは俺のことを気に入ってくれているのか。 人に好かれるっていうのは、手放しでうれしいものだ。 「安心してくれていいよ。俺はフェイトちゃんを裏切るような真似なんてする気持ち、さらさらないからね。 ・・・ま、年長者として、行き過ぎを注意したり、ちこっと方向修正したりすることはあるかもしんないけどさ。」 俺の言葉を聞いて、アルフは心底満足したような表情を見せた。 それからしばらくして、フェイトちゃんは『ジュエルシード』を一つ見つけたようだ。 「それでは、行きましょう。」 「て、今すぐか?」 急いで行こうとするフェイトちゃん。だけどその顔色は決して優れたものとは言えない。立っているのもバルディッシュを使ってやっとだ。 広域探索っていうのがどれだけの力を使うのかは分からないけど、少なくとも話す余裕がないほどなのだろう。 そのことを考慮したら、すぐに出陣なんて、とてもじゃないが許可できない。 「駄目だ、しばらく休んでから行くぞ。」 「でも・・・!!」 俺は止めようとしたが、フェイトちゃんは辛そうに目を伏せる。 ・・・そんな表情されたら、ぐらついちゃうじゃないかよ。 落ち着け。思考を張り巡らせろ。 まず、今なすべきことは?フェイトちゃんの休養と『ジュエルシード』の捕獲。 優先度は?個人によって差異あり。俺とアルフは前者、フェイトちゃんは後者を優先している。 フェイトちゃんには急がなければいけない何らかの理由がある模様。その理由は情報不足のため推測不能。 理由によっては譲歩の余地があるかもしれないが・・・今は余計な思考だ。 こちらの意見を押し付けることは逆効果。望ましいのは両方どりできることだが・・・。 瞬時にこれだけの情報を整理し、フェイトちゃんに問う。 「なあ、『ジュエルシード』の捕獲って俺にもできるか?」 そう、それができれば両方どりすることができる。だが返ってきたのは 「・・・いいえ、『ジュエルシード』を封印することは魔力によってしかできません。だから、魔導士でないと・・・。」 駄目か、くそ!! と、そこでアルフが 「あ、でも、『ジュエルシード』が暴走状態だったら、その無力化ぐらいならできると思うよ。」 ・・・仕方ない、そこで譲歩するか。 「・・・わかった。行こう、フェイトちゃん。」 それを聞き、フェイトちゃんが安堵の表情を見せる。それで無理に体を起こそうと―― 「えっ?」 する前に、俺が彼女を負ぶった。当然、フェイトちゃんは困惑するだろうが、気ニシナイ。 「あ、あの大地さん。歩けるんで」 「黙らっしゃい。そんなフラフラで言っても説得力ないわ。いいからここはお兄さんに甘えちゃいなさい。そんで、少しでも休養とること。いいね?」 有無を言わせない。 その後しばらくしてから、顔を真っ赤にしたフェイトちゃんが小さな声で「・・・はい」と呟いた。 俺はフェイトちゃんを背負ってビルから降りていき、アルフもその後に続いた。 フェイトちゃんは――俺は気づかなかったが――背負われている間中、幸せな表情をしていたそうだ。 Side Fate Testarossa 大地さんに負ぶわれて街中を歩くのはちょっと恥ずかしかった。けど、大地さんの体温が凄く心地よかった。 そのおかげか、『ジュエルシード』のある場所にたどり着く頃にはすっかり元気になっていた。 「さてと、あれが『ジュエルシード』かな?」 「はい。」 私は目の前に浮かぶ青い宝石――『ジュエルシード』を見た。魔力が満ちている。 どうやら、暴走一歩手前という感じだ。 「この状態じゃ、下手に刺激するのはまずいね。」 「そうだね。暴走するのを待ってから、それを止めて封印しよう。」 私はバルディッシュを握る手に力を込める。 そんな私たちの前に、大地さんが一歩進んで出た。 「大地さん?」 「暴走を止めるのは全部俺がやる。だからフェイトちゃんは封印に集中しな。」 突然、そんなことを言い出した。 「ちょ、大地?本気で言ってるのかい!?」 「本気もマジ。真剣と書いて大マジよ。」 「危険です!!協力して」 力をあわせて暴走を止めよう、という言葉は、途中でさえぎられてしまった。 「あのな、俺は『魔法』は一切使えないんだ。使えるのは『電子の制御』っていうのに特化した『具現心術』だけ。こと『ジュエルシード』に関しては戦うことしかできない。 だからさ、それ以外のこと全部フェイトちゃんやアルフ任せになっちゃうんだから、このぐらい俺にやらせてくれよ。」 そう、それは事実なのだ。魔法の事件に『具現心術』は戦い以外の使い道がない。 『具現心術』はあくまで純粋な『現象』を引き起こすのだから。 「でも!!」 なおも食い下がる私を、しかし大地さんは優しげな目で見つめた。 「大丈夫だって。俺は強いから。」 そう言って、私たちに背を向けてしまった。 もう、何を言っても聞かないのだろう。そんな意志の強さが感じ取れた。 「・・・結界ぐらい張らせてくれよ。『ジュエルシード』の魔力が漏れて同業者が来ちまうかもしれない。」 「・・・そうだな。じゃあ、それは頼んだわ、アルフ。」 アルフは頷くと封時結界を展開した。これでこの騒ぎは一切外に漏れることはない。 同時に、大地さんが詠唱を開始した。あの『セルフインプリメント』を作るための詠唱を。 一節一節、進む詠唱。その図形の十字架に祈るように、私は大地さんが怪我をしないことを祈った。 そして。 「Cross Square!!」 大地さんの詠唱完成と、『ジュエルシード』の暴走は同時だった。 Side Daichi Ohzora なるほど、こりゃすげぇ。魔力なんてものを知らない俺でもわかるほどの圧力だ。 一応、『Cross Square』を盾にして俺自身とフェイトちゃんたちを守る。 ただの図形と侮っちゃいけない。この『Cross Square』、立派な干渉力を持っている。 使いようによっては盾としても使えるのだ。・・・もっとも、盾と言うには少々心もとない点もあるのだが。 そう、これが持っているのはあくまで『干渉力』。『遮断力』ではないのだ。つまり勢いを殺すだけで、攻撃そのものを防ぐわけじゃない。 あまり過信しすぎると想定外の攻撃を食らう、なんてこともあるが、今回は平気だったようだ。 『ジュエルシード』の方を見ると、黒い気体の塊みたいのがあった。どうやらあれが『ジュエルシード暴走体』ってやつらしい。 先手必勝。俺は手のひらから電撃を放つ。それは過たず暴走体に衝突する。 が、それはちょこっと穴を開けただけで、すぐに修復される。――随分と頑丈かつ生命力?旺盛だことで。ホルマリン漬けにでもしてやろうかしら。 なんて冗談を考えていると、暴走体が突進してきた。後ろを気にしてみると、すでに避難してくれていた。 物分りのいい子達でお兄さん嬉しいね。俺は危なげなく横に飛ぶ。それで、あっさり暴走体を回避する。 暴走体の後ろ――こいつに前と後ろがあるのかもわからんが――に回り込み、次なる一手を打つ。 電撃で効かないなら、さらに攻撃力の高いもので攻撃してやればいい。 俺は目の前の気体粒子に電荷を与えてやる。それと同時に、前方に反対の電位を作り出す。 これで準備完了。枷をといてやればこの気体粒子は光速に限りなく近いスピードで電位の坂を転がり落ちる。 俺の――対人で使うにはあまりにも強力すぎる『必殺技』の一つ。 「荷電粒子砲!Fire!!」 ビームとも呼ばれる一撃。それはまさに光の一閃。 耳障りな音を立てて、それは暴走体に直撃した。さすがの暴走体もこいつの貫通力には耐え切れなかったようだ。 向こう側の見える穴を空け、暴走体は獣のような悲鳴を上げた。 ・・・さて、こいつが効くことが分かったわけだ。だったら。 俺は暴走体を殲滅するべく、先ほどの5倍の荷電粒子を作り出した。 Side Fate Testarossa 凄い。それが大地さんの戦いを見た私の感想だ。 さっきの荷電粒子砲の威力も確かに凄い。けど、それ以上に凄いのは大地さんの戦い方そのものだ。 最初の電撃で、恐らく装甲の厚さを見たのだろう。荷電粒子砲もどの程度効くかのテストだったのだろう。 そして、先ほどの回避。まるで無駄な動きがなかった。よく見れば、『Cross Square』を使って敵の動きをそらしていた。 全く無駄のない戦い方。与えられた情報を余すことなく使い、戦況を把握し、処理する戦い。 私にあんな戦い方ができるだろうか?答えは否。 私は速さを使って――悪い言い方をすれば無駄な動きを多く使って――敵を圧倒する。 今大地さんが放とうとしている、先ほどの数倍の荷電粒子砲。それも恐らく、ちょうど倒しきる威力なのだろう。 何もかもが凄い、大地さんの戦い方。私は彼を、いつの間にか羨望と憧憬の眼差しで見ていた。 「荷電粒子砲×5!Fire!!」 大地さんの掛け声とともに、5本に分かれた荷電粒子砲が放たれる。それはそれぞれに螺旋の軌道を描き、暴走体の構造全てをえぐり抜いた。 「フェイトちゃん!!」 「はい!!」 私は名前を呼ばれると同時に、むき出しになった『ジュエルシード』にバルディッシュを構える。 「バルディッシュ!!」 『Sealing Form!!』 バルディッシュに命じると、バルディッシュは翼を生やした槍の姿になった。 シーリングフォーム。『ロストロギア』の封印のために、デバイスが最大出力を発揮できる形。 これをもって、あの『ジュエルシード』を封印する!! 「『ジュエルシード』シリアル]]・・・封印!!」 『Sealing.』 バルディッシュから金色の魔力光線が放たれ・・・封印が完了する。 封印された『ジュエルシード』にバルディッシュの宝玉部分で触れ・・・格納完了。 バルディッシュから大量の蒸気が噴き出される。封印には、それだけの魔力を必要とするのだ。 「ありがとう、バルディッシュ。」 『Yes, Sir.』 それだけ言うと、バルディッシュは元のアクセサリー型に戻ってしまう。 私の方は・・・うん、平気だ。魔力の消費も思ったほどない。 これも大地さんのおかげ・・・。 振り返ると、すぐ目の前に大地さんがいた。私はびっくりして顔が真っ赤になってしまった・・・? あれ、何で私顔が赤くなってるんだろう? 「顔色良し、脈拍、体温・・・ちょっと高いな。けど健康状態に異常はなしと。」 私の顔を見て腕の脈を測り、額に手を当てる。どうやらそれで私が無茶をしてないか確かめているようだ。 「どうやら君は無茶しすぎる性格らしいからね、フェイトちゃん。体調管理はしっかりとやらせてもらうよ。」 出会ったばかりなのに、この人は私のことをしっかりと理解している。 「凄いなあんた!!本当に一人で戦いきっちまったよ!!」 「ははははは、なめんなよ。」 陽気に笑う大地さん。ああ、本当に、なんて暖かい笑顔をする人なんだろう。 「あの。」 どうやら、この笑顔を見ると私は失言をするようだ。 「大地さんのこと、これからお兄ちゃんって呼んでいいですか。」 言ってから後悔した。 アルフも大地さんも目が点になっている。私は恥ずかしさから、顔から蒸気を噴き出すほど真っ赤になってしまった。 しばらくの沈黙が痛い。 そして。 ぷ。 「あっはっはっはっは!!いいぜいいぜ!! お兄ちゃんでもお兄様でも兄様でも、お兄ちゃまとか兄貴とか兄やとかあこれフェイトちゃんに合いそうだな兄ちゃまとか兄君、兄君様、兄上様、兄ぃ、お兄たま、何でもいいぜ!!」 その後に「シスタープリンセスっっっ!!」とか力の限り大地さんは呟きました。・・・何だかよくわからなかったけど。 いいってことだよね。 「それじゃあ、これからよろしくお願いします。お兄ちゃん。」 「おうよ、妹のためにも頑張るぜ、フェイトちゃん。」 私は、何だかとても嬉しかった。 それから、私たちの日々は、ずっとにぎやかになった。
『シスタープリンセス』ッッッ!!時よ止まれ!!!!



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