2008/07/11

ラブコメ一直線





何かもう正式にシリーズ化しそうな勢いだな。




Side Akira Jin-nai 僕は図書館で地図を見て、大きくため息をついた。 「そういえば僕、『アイツ』なしじゃこっちの字読めないじゃん・・・。」 これでも異世界人だ。文字体系の全く違う世界で生きてきたのだ。 これまでは『情報修正』の力で文字情報を自分の知る文字に変えて読んでいたが、『ヤツ』なしにそんなことはできない。 結局、どうしたって高町さんの手助けなしじゃどうしようもないわけだ。 こうなっては高町さんの親切に感謝しよう。 「その前に・・・。」 ひょっとしたら、長期の滞在になるかもしれない。僕は寝床になりそうな場所を探すため、図書館を後にした。

ゴチャマゼクエストSS 『異邦見聞録』 〜麻帆良学園都市・外伝〜

魔法少女リリカルなのは

閃光剣と杖

第三話・そして、高町家

Side Nanoha Takamachi 私は授業を受けながら、今朝出会った不思議な男の子のことを思い返していました。 最初は私の秘密の練習場所に立っていた。 魔法の練習を見られたらまずいから、茂みに隠れてやり過ごそうとしたら、すぐに気づかれてしまった。 びっくりして腰を抜かしてしまって、起き上がらせてもらった。そのあと、魔法のことがバレてしまって。 でもアキラ君は全く驚きませんでした。 そして、あの凄い速さ。あれは魔法じゃなかったのかな? 私は念話でユーノ君と相談してみた。 (ねぇ、ユーノ君。今朝のアキラ君って本当に魔導士じゃないの?) (そうだね。彼の言葉どおり、彼からは魔力を感じられなかった。多分、本当に魔導士ではないんだと思う。) そう返ってきた。でも、私には気になることが一つある。 『僕にとってはそういう超常的な存在の方が身近なんで。』 そう、アキラ君は言っていました。つまり、アキラ君自身は魔導士じゃないけど、身近にはいたってこと? (ひょっとしたら、まだ確認されていないこの世界の魔法にあたるものを使う人なのかも。) (え、この世界に魔法があるの!?) (いや、あるかもしれないってだけだよ。まだ確定じゃない。ひょっとしたら、彼はこの世界の人間じゃないかもしれない。) そうなんだろうか?彼はユーノ君みたいに違う世界から来た? でも、アキラ君が行きたがっている『麻帆良学園』っていうのは、多分日本の地名だ。 それにアキラ君自身も日本人にしか見えない。 異世界から来たとは思えない。 (今日この後会うんだから、そのときに聞けばいいかな?) (・・・正直に話してくれるとは思えないけど、それしかないか。) ユーノ君はそう言うけど、私は多分、正直に話してくれるんじゃないかなって思う。 だってアキラ君の目は、凄くまっすぐだったから。 Side Akira Jin-nai 「う〜む・・・。」 宿としていい場所は、やっぱりここなんだが・・・。 ここは毎日高町さんがくるだろう。だってここは、彼女の秘密の練習場だ。 「弱ったな・・・。」 ここ以外の場所は街から遠すぎるし、街の中なんてもってのほかだ。 やはり、今日高町さんと会った後、この街を出て行くしかないか。 別にこの街にいなければいけないわけじゃない。どこか住やすい場所を探して・・・。 「アキラく〜ん!!」 と、そうこうしているうちに高町さんが来た。もうそんな時間だったのか。 「高町さん。こんにちは。」 「こんにちは。あのね、アキラ君。ちょっと聞いてもいいかな?」 軽く息を整えて、高町さんは突然切り出した。 「アキラ君って、この世界の人?」 いきなり何を言い出した、この娘さんは? 僕がこの世界の人間かって?もちろん答えはノーだ。 けど、そんなことになぜ気づいたんだろう? もしかしたら、この世界では異世界へ渡る技術というのが存在するのかもしれない。 『アイツ』が聞いたら驚きそうだな。 ともかく、今はこの問いに答えることが先決だな。 「いえ、違います。何で気づいたんですか?」 そう答えたら高町さんは目を見開いて驚いた表情をした。・・・てなに、その反応? 「ごめんなさい、これは僕が言い出したんです。けど、まさか本当に別世界の人だったなんて・・・。」 と言うのは、肩に乗るフェレット。ああなるほど。読めたぞ。 「すると、君もこの世界の住人ではないんだね?」 「はい、僕は『ミッドチルダ』から来たスクライア一族のユーノ=スクライアって言います。」 ・・・世界に名前までついているのか。凄いことだ。 けど、これでほぼ確定した。この世界には 「ということは、この世界には世界を渡る技術が存在するんだね?」 「いえ、この世界にはないはずですよ。」 ああ、この世界には存在しないのか。でも、世界を渡る技術が存在する世界はあると。 「凄い話だな・・・。」 僕の呟きをフェレット――ユーノは不思議そうな顔をして聞いていた。だが、それは流して 「それじゃあ、あなたはなぜこの世界に来たんですか?」 ユーノが少し緊張感を持って聞いてくる。場合によっては敵対も辞さないという覚悟がひしひしと伝わってくる。 しかし、高町さんは困惑の表情を浮かべている。どうやら、少々温度差があるようだ。 「僕がこの世界に来たのは、単なる事故か何かだ。仲間が転移陣を誤作動させたか何かで、僕一人だけが飛ばされたんだ。」 正直に答えておく。敵対する理由にはなりえないはずだから。 それで、ユーノが安堵のため息を漏らす。どうやら、彼は覚悟と目的をもってこの世界に来ているらしい。 「すいません、『ジュエルシード』を狙ってきた違法魔導士かもと思って身構えていたんですが、杞憂だったみたいですね。」 「いや、かまわないよ。警戒するのは当然だしね。」 それよりも、『ジュエルシード』か。いったいなんなのだろう。 「あ、あの、アキラ君?それじゃあ、朝行きたいって言ってたのって・・・?」 「ああ、あれですか。あれは、ここが僕が直前にいた世界かどうか知りたかったから聞いたんです。どの道僕一人じゃわかりませんでしたよ。」 僕はこの世界の文字が読めないから。そう言って、肩をすくめてみせる。 それで納得する高町さん。 「それで、よろしかったらなんですが、『麻帆良学園』が存在するかどうか確かめるの、手伝ってもらえませんか?」 朝は散々断っておいて身勝手だが。 「もちろんだよ!!」 高町さんは満面の笑みで答えてくれた。 それから図書館に来て、地図を広げた。 「アキラ君、『麻帆良学園』ってどこにあるの?」 「え〜っと、確かS県だったかな?」 僕の言葉に従って、高町さんがS県の地図を見る。 だが。 「・・・アキラ君、やっぱり『麻帆良学園』なんていう場所はないよ。」 ・・・やはりか。 返ってきた答えは無情なものだったが、予想はついていた。 『麻帆良学園』は巨大な学園都市だ。あの世界だったら知らない人の方が少ないだろう。 高町さんが知らなかった時点で、この世界はあの世界ではない可能性が高かったのだ。 「そうですか・・・。いえ、どうもありがとうございました。おかげで助かりました。」 僕は頭を下げる。落ち込んだところでどうにもならない。次にすべきことを考えるんだ。 そうなるとやはり、まずは寝床の確保だ。すぐにでもこの街を出て・・・ 「あの、アキラ君。アキラ君はこれからどうするの?」 高町さんがそう聞いてくる。どうしようか、正直に話すとなんかとめられそうな気がする。 ああ、そういえばあの世界でも最初、『アイツ』の野宿発言は皆から止められたな。こんな感じか。 となると、ここは嘘をついてでも・・・。 「大丈夫ですよ、行くあてならありますかr「嘘だよね。」・・・はい。」 あっさり見破られました。てか当たり前だね。嘘つくならもう少しましな嘘つかなきゃな。 「・・・とりあえず、この街で寝床になりそうな場所はあの練習場ぐらいだから、早いうちにこの街を出て、他の街で寝床になりそうなところを探します。」 正直に答える。高町さんの表情が凄く悲しそうになる。うう、罪悪感・・・。 が、次の瞬間高町さんの表情は名案を思いついたとばかり、花が咲く。 「そうだ、アキラ君、うちにきなよ!!うちだったら部屋も空けられると思うし・・・」 とんでもない提案をしてきましたよ、この娘さんは。 当然、反発する。 「いや、ちょっと待ってください!そんな、そこまで迷惑をかけるわけにはいきませんよ・・・」 「でも!!」 議論がヒートアップし、自然と声が大きくなる。 僕たちは忘れてはいけないことを忘れていた。 ここは図書館なのだ・・・・・・・・・。 追い出されました。まあ、当然だよね。 「うう、ごめんね、私のせいで・・・。」 「いえ、僕も不注意でした。すいません・・・。」 うなだれる僕たち。 が、議論に決着がついたわけではない。 「・・・私は野宿なんて認められないよ。やっぱり、うちに来るべきだよ。」 「でも、高町さんがよくても家の人がいいっていうとは限らないでしょう?それに僕のこと、なんて説明するんですか?」 それに言葉を詰まらせる高町さん。そう、さっきの話からこの世界には世界を移動する術はないのだ。 馬鹿正直に『事故で世界を転移してしまい帰れなくなりました』などと言ったら黄色い救急車イエローピーポーを呼ばれてしまう。 だから、僕が野宿するのが一番いいのだが、このお嬢さんはなかなか折れてくれない。 本当に芯の通ったいい子だとは思うが、これは少々頑固すぎだと思う。間違った方向に進まなければいいが。 「でもでも、絶対野宿なんて駄目だよ!!」 今の僕には彼女を説得する術がない。全力で退却することはできるだろうが、それだと泣かせてしまいそうだ。 ここはやはり、僕が折れるしかないのか。 「・・・仕方ないです。それじゃあ、とりあえず行くだけ行ってみますけど、家の人のNGが出たらすぐにあきらめてくださいね。」 ため息をつきながらそう言った。全く、僕もなかなか損な性格だ。 Side Nanoha Takamachi 自分の家に帰ることがこんなに緊張する日が来るなんて思いもしませんでした。 「・・・やっぱり、やめます?」 となりでアキラ君が気遣ってそう言ってくれるが、私は首を思いっきり横に振る。 だって、私と同い年くらいの子供が野宿なんて、絶対いけないと思います。 私は意を決し、家の扉を開きました。 「た、ただいま〜・・・。」 声の震えまでは消せませんでした。 今、私の目の前には4人の人がいます。 お父さん・高町士郎さん。お母さん・高町桃子さん。お兄ちゃんの恭也さんとお姉ちゃんの美由希さん。 そして私の隣に一人の男の子・神内アキラ君。 流れている空気はかなり険悪なものです。何でこんなことになったかというと。 『神内アキラ君と言ったね。娘とはどこで知り合ったのかい?』 『今朝、山の中で偶然出会いました。』 『君はどこから来たんだい?』 『言えません。』 『君の目的は?』 『元の場所に帰ることです。』 『その場所っていうのは?』 『言っても意味がないと思います。』 『何故?』 『言えません。』 etcetc... 帰りがけに『僕は嘘が苦手だから、なるべく本当のことをしゃべります。しゃべれないことは黙秘します。』とは言ってました。 けど、ここまではっきりと言ってしまうとは・・・。私はハラハラが止まりません。 お父さんがふぅ、とため息をつくのがわかりました。ああ、大丈夫かな・・・。 「わかった。言えないということを無理に聞き出そうとは思わない。けど、一つだけいいかい?」 「なんでしょう?」 途端、険悪な空気が一気に張り詰めたものになりました。え?何これ? 「君のその背負っているものを見せてくれないかい?」 ピクリと、アキラ君の表情が動きましたが、アキラ君は背負っている棒状の物をお父さんに差し出しました。 ・・・そう言えば、朝からずっと背負っていたけど、なんだったんだろう・・・。 「開けてもいいかね?」 「・・・どうぞ。」 アキラ君の許可を得て、お父さんは包みを開けていきました。 そして中から出てきたものは―― 「真剣・・・だね。」 そう、紛れもなく、真剣でした。 「何故、こんなものを持っているのかね?」 お父さんから出ているプレッシャーが、一段と増しました。私は思わず息がつまりそうになりました。 だけど、アキラ君はまるで動じずに――いえ、ちょっとだけ翳りを帯びた表情をして 「それは父さんの形見だから。父さんが唯一残してくれた僕の武器だから・・・。」 そう答えました。 それで、お父さんからのプレッシャーは一切消えました。 「・・・それは、悪いことを聞いてしまったね。」 「・・・いえ、もう随分と前のことですから。僕は気にしてませんよ。」 少しの間翳っていたアキラ君の表情は、もう元に戻っていた。 お父さんは顔だけ真剣な表情をして。 「しかし、アキラ君。この国の法律には銃刀法というのがあってだな。許可なく帯刀することは許されないんだよ。」 「ええ、知ってますよ。」 アキラ君もまじめな表情だ。けど、次の瞬間お父さんは表情を崩した。 「けど、うちは道場をやってるから、その許可がある。うちにいる間は持っていても大丈夫だろう。もちろん、使っちゃ駄目だぞ。」 それって・・・。 「え、それじゃあ・・・。」 「うちでよかったら、好きなだけいるといい。なあに、一人ぐらい増えたところで大した負担じゃないさ。なあ、桃子さん。」 お母さんは笑顔でうなずく。 お兄ちゃん。 「父さんがいいと言ってるんだ。俺に異論はない。」 お姉ちゃん。 「私は全然おっけーだよ。むしろ弟が増えてらっきー?」 満場一致です・・・。 「・・・アキラ君!!」 「うそ・・・。」 私は満面の笑みでアキラ君の手をとりました。アキラ君は信じられないように呆けていましたが。 アキラ君、高町家入り決定ですっ!!!! Side Shiro Takamchi 「よかったのか?」 なのはがアキラ君に部屋を案内しに行ってから、恭也が言った。 「何がだ?」 「あの少年のことだ。そんなに安易に家に置いたりしてよかったのか?」 そう、俺が最初懸念していたことだ。 彼がひょっとしたら何がしかの裏組織の人間ではないかということ。それが気がかりだった。 高町――不破の家というのは、裏社会では標的になりやすい。 だから彼もそういった組織の人間かと思った。彼の背中の包みも、最初から真剣だとわかっていた。 だから、時間をかけて面談したのだ。その結果が。 「彼の目は終始真っ直ぐだったよ。あれは、自分の正義に従って真っ直ぐに生きている者の目だ。いやはや、あんな年頃の少年にあんな目ができるとはな。」 そう、あんなに真っ直ぐな目は見たことがない。あれは相当自分の正義を痛めつけられ、その上で洗練され、自分にとっての正義を見つけた者の目だ。 だから俺は、彼の滞在を許した。彼が裏の人間であるとは到底思えないし、もしそうだとしても、俺は後悔しない。 「そんなに疑うんなら、明日彼と模擬戦でもしたらどうだ。全力で剣を合わせればお前だって納得するだろう?」 「・・・いいのか?彼はまだ子供じゃないか・・・。」 「子供と侮っていると負けるぞ、恭也。」 俺の言葉で恭也が目を見開く。 彼の動きを見ていて分かった。動くときに軸が全くぶれていない。あの身の丈ほどもある剣を持ちながら、だ。 あれは相当な鍛錬を積んでいる。 「彼はきっと、とんでもなく強い。」 その言葉で、恭也が停止した。 ・・・今から明日が楽しみだ。 Side Akira Jin-nai 「それじゃあ、アキラ君はこの部屋を使ってね。」 「ありがとうございます。高町さん。」 僕は高町さんに案内され、自室として用意された部屋へ行った。 結構広い。ここまでしてもらうと、逆に心苦しい。 それにしても、わざと追い出されるつもりで、野宿の話は一切出さないであれだけ険悪な雰囲気まで出したのに、なんでこうもあっさり話が通るんだろう? 謎だ。 「あ、それとね、アキラ君。」 「え?」 「なのは、だよ。それと敬語も禁止。」 いや、それはさすがにちょっと恥ずかしい気が・・・。 けど、この娘さんはきっと許してくれないんだろうなぁ・・・。 「えっと、それじゃあ、なのは・・・。これで、いいかな?」 「うん、合格!!」 ぱっと花が咲いたような笑みを見せる高町さ――もとい、なのは。 「それじゃあ、夕ご飯になったら呼ぶからね。また後で、アキラ君。」 「うん、また後で。その・・・なのは。」 パタン、とドアが閉められる。 確認するまでもなく、僕の顔は真っ赤だった。
KWAHHH!! 何回言っても何回言っても背中が痒い痒い痒いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!



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