走り出したらとまってはいけない。
私こと、高町なのははごくごく平凡な小学三年生でした。 何で過去形なのかというと、つい最近助けたある人(?)に頼まれて、とある普通ではないことをしているからです。 それで、その普通じゃないことっていうのが・・・。 「ふぅん、魔法少女ねぇ・・・。」 そう、魔法少女です。だからあんまり普通の方々に知られてしまうのは好ましくないのですが・・・。 「ああ、自己紹介が遅れましたね。僕の名前は神内アキラです。」 「あ、た、高町なのはです!!」 今日会ったばかりの人にいきなりバレちゃってるんです〜〜〜〜!!Side Akira Jin-nai 茂みの中にいたのは女の子とフェレット。 女の子は僕と同い年ぐらいだ。可愛い、と表現しても良いくらいの美少女だ。 フェレットの方は僕の見たこともないような種類だった。この世界特有の種類だろうか。 ここに来たのは散歩だろうか。だが、なぜ隠れていたのだろう。 とりあえず、今発している殺気を消す。どうやら無意識に出してしまったらしく、女の子の顔が少し青ざめている。 ・・・悪いことをしてしまったかな。 「ごめんなさい。立てますか?」 「あ、え?」 女の子は立とうとして、自分がしりもちをついて膝が笑ってることに気がついた。・・・鈍感な子だ。 僕は彼女の手をつかんで、立たせてあげた。彼女はありがとう、とお礼を言った。 それはともかくとして、まず状況を整理した方がよさそうだ。 第一に、ここはどこか。十中八九異世界だ。 僕たちは『情報の保管』のために、いったん麻帆良学園から『幻想世界』まで飛んだ。 『幻想世界』は真っ白なだけの世界だからここは『幻想世界』ではありえない。 元の麻帆良学園があった世界だろうか。ここは日本のようだし。 いや、即決は禁物だ。何せ、同じような世界はいくつもあるのだから。 ともかく、それはこれから調べていくしかなさそうだ。 次に、なぜ飛んだのか。これも明白だ。 ずばり、『ヤツ』の気まぐれだ。いや、『ヤツの本体』と言った方が正しいか。 実際、突然『召還』が発動したときに『ヤツ』も驚いていた。 『ヤツ』ら以外には『幻想世界』へのアクセスはできないのだから、これはほぼ決定で間違いないだろう。 いや、『ヤツの本体』の気まぐれでもなく、単なる計算違いかもしれない。 僕たちが『幻想世界』に戻ったのを感知した『ヤツの本体』が、『終わった』と勘違いしたのか。 ともかく、気まぐれだか誤算だかで僕は飛んだのだ。全く、こっちの身にもなってほしい。 最後に、なぜ僕だけなのか。 これは今までありえなかったことだった。僕たちが世界を渡るときは必ず5人一緒だった。 なのになぜ今回だけ、僕一人なのか。 ひょっとしたら、別々の場所に転移したのかもしれない。そうだとしたら探さないといけない。 「・・・ぇ、ねぇ・ば・・・」 どうやら、色々と動かなければいけなさそうだ。 「ねぇ!!」 「ぅわはい!?」 考えを纏めたところで、僕は少女に呼ばれていることに気がついた。 どうやら結構長いこと考えに沈んでいたらしい。少女が頬を不機嫌そうに膨らませていた。 正直迫力はなく可愛いだけだった。 「ごめんなさい、ちょっと考え込んじゃったみたいで。」 とりあえず謝っておく。すると彼女は表情を笑みに変えた。 「それより君、こんなところでどうしたの?ここってあんまり人の来る場所じゃないんだけど・・・。」 どうやらそうらしい。さっきから結構時間が経っているが、人が通る気配は一切ない。 転移の瞬間を誰かに見られなかったのは幸いだっただろう。 あれは異能に関係ない人でも、異能者でも『ありえない』と思う代物なのだから。 「それが、ちょっと道に迷ってしまって・・・。ここってどこですか?」 ごまかしておくと同時に、地名を得ようとする。 あまり『日本』という地の名前を知っているわけではないが、知っている名前が出てくれれば助かる。 「ここ?海鳴市だよ。」 ・・・残念ながら、聞いたことのない名前だった。 「そうですか、ありがとうございます。」 だが礼は言っておいた。それが礼儀というものだ。 「あの、どこに向かおうとしてるのか教えてくれる?知ってるところだったら、私案内するよ。」 ・・・実に礼儀正しい女の子だ。けど、今の僕にはそれが実に辛いね。 さて、なんと答えたものか。 「あの、麻帆良学園って知ってますか?」 やはりここは自分が知っている地名を出すのが良いだろう。これなら、この世界があの世界かどうかもわかる可能性がでる。 だが返ってきた答えは 「ごめんなさい・・・、知らないです。」 ということだった。ここはやはり全く違う別世界なのか、それともこの子が知らないだけなのか・・・。 考えても仕方ないことだ。とりあえず、地図のある場所へ行こう。 「そうですか、色々とありがとうございました。」 お辞儀をし、去ろうとする僕。 が。 「あ、あの!私この後学校があるんだけど、それが終わったら一緒に探しましょう!!」 ・・・本当にいい子だね。だけど、今の僕には辛いんだってば。 「あの、いえ、ほんと大丈夫ですから。気にしないでください。」 「でも、困ってる人を放っておくのはやっぱりよくないよ!!」 それがさらに僕を困らせてるんだよとは言えない。 何とか僕は断ろうとしたが、彼女はなかなか折れてくれない。芯の通ったいい子だとは思うんだけどね。 そうこうしているうちに、彼女のタイムオーバーとなった。 「あうぅ〜・・・、今日は練習できなかった・・・。」 そう言って涙目になる少女。何の練習だろうか? そういえば。 「最初茂みに隠れてましたよね。あれってなんだったんですか?」 うぐ、と僕のその言葉に少女が見るからにあせりだした。 何か人に言えないようなことなのだろうか? そこでふと、ある可能性が思い浮かんだ。状況的にあの子供先生が思い浮かんだからだ。 冗談に見せてカマをかけてみるか。 「ひょっとして、魔法の練習だったりしてね〜。」 「え、ひょっとしてあなたも魔法使い!!?」 ・・・ビンゴ。 それで紆余曲折を経て、冒頭に至るわけだ。 Side Nanoha Takamachi 私が魔法使い――魔導士だと知って、男の子――神内アキラ君は驚きもせずに納得してしまいました。 私はこんなにあせってるのに?何で?? 「あ、あの。驚かないんですか?」 聞いてみる。するとアキラ君はあっけらかんと 「ええ、僕にとってはそういう超常的な存在の方が身近なんで。」 凄い答えを返してきました。見た感じ私と同い年ぐらいなのに・・・。 「あ、あの!あなたは時空管理局の方ですか!?」 突然、私の肩に乗ったフェレットさん――ユーノ君、私を魔法の世界に導いた人――があわてたようにしゃべりだした。 それを聞いてアキラ君はちょっと驚いた表情をして、「まぁオコジョもしゃべるしな・・・」と何事か呟きました。 「いや、僕はその時空なんちゃらというのは関係ありません。それが何か?」 アキラ君がそう言うと、ユーノ君は安心したような複雑な表情でため息をつきました。 どうしたんだろう? 「それはそうと、高町さん。時間いいんですか?結構経っちゃいましたけど。」 アキラ君のその言葉で、私は顔から血の気が引いていくのがわかりました。 完全に遅刻です。 「どどどどど、どうしようユーノ君!!?今から家に帰ってから行ったら完全に遅刻だよー!!」 「おお、落ち着いてなのは!!こういうときは人目に見つからないように高速移動の魔法で・・・ってなのははまだそんなの使えなかったー!?」 万事休すという言葉を作った人は偉大だと思います。 私たちがそうしていると。 「あ〜、どうやら僕がいらんこと言ったせいみたいですね。お詫びと言ったら何なんですけど、運びますよ。」 アキラ君が落ち着いた感じでそう言いました。 「え、あ!転移魔法を使うんですか!?」 ユーノ君が早合点して言うけど 「違う違う。さっきも言ったけど僕は『魔法使い』じゃないから。」 そう。さっき聞いた言葉の中に、確かに「僕は『魔法使い』ではない」っていうのがありました。 じゃあ、どうやって? 「文字通り、『運ぶ』んですよ。」 そう言うとアキラ君は、背中を出しました。乗れってことなのかな? 私は何が何だかわからないままその背中に乗り、しっかりと首に腕を回しました。 ・・・触ってみると、結構筋肉あるんだな〜。 「それじゃ、行きます。振り落とされないようにしっかりつかまってて!!」 アキラ君は私がつかまったのを確認すると、走り出しました。って、本当に運ぶの!? 無理だ。私はそう言おうと思いました。 でも、そう言う事が無理でした。だって次の瞬間。 「わぶ!?」 「しゃべらないで!舌を噛むから!!」 アキラ君は文字通り、『風』になりました。 すごい・・・。 私はアキラ君の背中から見える光景に見とれてしまいました。 ものすごい勢いで後ろに流れていく景色。 そして、その速さを肌で感じられるほどの風。 「次、どっち!?」 「あ、え、えと、右です!!」 アキラ君に時折道順を教えながら、この風の世界をいつまでも感じていたいと思いました・・・。 Side Akira Jin-nai 高町さんの家は結構大きかった。見たところ、道場もあるようだ。 何かしらの武術をやっているのだろうか? 「高町さん、つきましたよ。大丈夫ですか?」 「はぇ〜・・・。」 ・・・この娘さんを見る限り、とてもそうは思えないが。 「本当に大丈夫ですか?学校、遅刻しませんか?」 「あ、うん大丈夫。この時間だったら十分間に合うよ。」 ありがとうね、と彼女は言った。足取りは大丈夫そうではないが。 かと言って、僕が学校まで運ぶわけにもいかないだろう。結構人目につくだろうし。 彼女の言葉を信用する他ないだろう。 ふらりふらりと家に帰っていく高町さん。 と、家に入る前にこちらを振り返り。 「アキラ君。私、手伝うからね。」 力のこもった瞳でこちらを見てきた。 ・・・どうやらこれは折れるしかないらしい。 「わかりました。それじゃあ、学校が終わるぐらいになったら、さっきの場所に行きますんで。」 そう答えると、彼女はにこっと微笑み、「じゃあね」と言って家に入っていった。 正直に言うと、ちょっとドキっとした。ヘレンちゃんとどっちが可愛いかなって違う!女の子をそんな目で見ちゃだめだ!! しばし自問自答した後、僕はその場を後にした。とりあえず、図書館にでも向かおう。場所はわからないけど、何とかなるだろう。 全く、『アイツ』もいないというのに、いや、いないからこそ、今回もまた厄介なことになりそうである。 このとき僕が思っていたのは戻るの大変そうだな〜とか、そんなことだった。 けど、本当の厄介はもっと別のところにあったんだ。 ********** 平凡な日々が続くと思っていた。 ゴチャマゼクエストSS 『異邦見聞録』 〜麻帆良学園都市・外伝〜
魔法少女リリカルなのは
閃光・剣と杖
第一話・出会ったばかりの勇者たち
いつも一緒にいると思っていた。
けれど何事にも終わりはあり。別れとともに始まりはある。
手にしたものは剣との出会い。出会った者は白の少女。
ゴチャマゼクエスト異邦見聞録 麻帆良学園都市・外伝 魔法少女リリカルなのは 閃光・剣と杖の章 開幕です・・・。
Side Daichi Ohzora 「魔法、ねぇ・・・。」 あの後俺はフェイトちゃんに展開したフィールド――結界というらしい――を解いてもらった。 危害を加える気がないということを全面にアピールするため、一度着た白衣を脱いで凶器の類を持っていないことを証明した上でだ。 てか、あの自己紹介は失敗だった。やったあと自分で恥ずかしくなって、「やっぱ今のなし!!」って言ったぐらいだからなぁ・・・。 まあともかく、敵意がないことを示した上で、ちこっと論理誘導して(外道)、事の核心を聞き出したのだ。 曰く、彼女らはこの世界の住人ではなく、『ミッドチルダ』という世界からはるばるやってきた。 曰く、この世界やその『ミッドチルダ』を含めた世界を次元世界と呼び、世界によっては魔法技術が発達している。 曰く、この世界に来た理由は『ジュエルシード』なる古代遺産(『ロストロギア』)を求めてのこと。 彼女らが最初に俺を警戒した理由は、見たこともない転移魔法(そう見えたらしい)で現れたから。同業者かと思ったらしい。 さて、ここまでの情報を得た上で、俺はどうすべきか。 オーソドックスなとこだと、俺の能力や正体は隠して接するところだが――。 面白くない。 それに、そんなのフェアじゃない。 この子は素性不明の俺に(無理やり聞き出した節はあるけど)全てを――恐らくだが――話してくれた。 なのに俺は何も話さない? そんなの俺のすることじゃない。桜井さんのすることだ。(え、ちょっと、若先生!?) 何か聞こえた気がするが気ニシナイ。ていうか俺の中じゃアナタの評価そんな感じですよ?桜井さん??(・・・。) 次元の壁を越えた突っ込みへの突っ込み返しも終え、俺は頭の中で話す内容を纏める。 「んじゃ、次は俺の番な。」 そう言って、俺は事の次第を話し始めた。Side Fate Testarossa このお兄さん――大空大地さんの言っていることは信じがたいものだった。 「『具現心術』・・・ですか?」 「そ。」 信じられない。が、嘘を言っているようにも見えない。 『具現心術』・・・物質の世界、すなわち私たちが住むこの世界の『物質』を媒介にして、精神世界の現象を呼び起こす。 つまり、詠唱もデバイスもいらず、媒介を持ち念じるだけで、一定の現象を引き起こすのだという。 ――そんなの、どんな大魔導士にだってできることじゃない。 「信じられません。」 「ま、そうだろうね。」 私の言葉に、けれど大地さんは軽く手をひらひらとさせて気にもせず答えた。 そしておもむろにポケットに手を入れた。 「!!何してんだい!?」 「うぉわ!狼がしゃべった!?」 その行動に、狼の使い魔・アルフが一括し、大地さんはそれに驚いてのけぞった。 その拍子に、ポケットから何かが飛び出してきて、私の手の中に納まった。 「・・・?これは何ですか?」 見た感じ、何かのスイッチのようだ。スイッチの横には小さな穴がある。 100円ライターとかいうののふたの部分だけをとってきたようなものだった。 「ていうかフェイトちゃん!この狼しゃべんの!?」 「え、あ、はい。一応使い魔だから。」 イッツマジカル、と何事か大地さんは呟いた。どうやら納得してくれたようだ。 アルフはというと、いまだ大地さんを威嚇している。 「それで、これは・・・?」 「ああ、それがさっき言った『具現心術』の媒介だよ。炎をイメージしながらスイッチを押してみな。」 「え、こ、こう・・・ですか?」 私は言われたとおり、目を閉じ揺らめく炎をイメージしながらスイッチを押す。 すると、小さな穴から小さな炎が出てきた。 その色は、私の魔力光と同じ、金色。 「これはライターとして使われてるやつでさ、『火を起こす』っていう一点のみに特化した媒介なんだ。だから、誰でも火を起こせる。」 ま、色や形は人によって違うけどね。と大地さんは締めた。 不思議だ。いや、確かに魔法文化のある世界ではこういうものも存在する。 しかし、これは魔力を全く使っていない。だから、それこそ文字通り誰でも使えるのだ。 私は『自分だけの色』の炎に、しばらく見入っていた。 「しかしとんでもない能力かと思ったら、意外とショボいんだねぇ・・・。」 アルフがそんな感想を漏らした。それで大地さんは少しカチンと来たみたい。 「まさかこれが『具現心術』の全てだと思ってるのかい?イヌ科の大型動物君。」 「アルフだ。妙な呼び方するんじゃないよ!!」 けれど、大地さんはアルフの言葉を受け流した。 「ここからが本題だ、フェイトちゃん。それと犬。」 「さっきよりひどくなってる!?」 アルフの叫びは無視し、大地さんの目が真剣なものになる。 「『具現心術』は確かに精神世界の現象を映し出す技術だ。けど、心は誰もが一緒ってわけじゃないだろ?」 その通りだ。私は私だしアルフはアルフ、大地さんは大地さんなのだから。 「それはつまり、精神で起きている現象が人によって違うってことなんだ。あるやつは炎だろうけど、他のあるやつは風かもしれない。ひょっとしたら氷かも。」 「つまり、本当に『起こせる』現象は数が限られていて、その威力は今のライターと比較できないほど。」 話が早くて助かる、と大地さんは満面の笑みでうなずいた。 「そして、それに必要な媒介も人によって異なる。その媒介のみでしか自分自身の現象を引き出すことはできない。 そういった媒介のことを『セルフインプリメント』と呼ぶんだ。」 「『セルフインプリメント』・・・。」 この世界の英語だ。意味は『自分だけの道具』。 「それじゃあ、あんたもその『セルフ』なんちゃらを持ってるっていうのかい。」 「『セルフインプリメント』な。あ〜、持ってるっつーかなんつーか。」 アルフの問いに、大地さんは歯切れ悪く答える。何か問題でもあるんだろうか? 「面白いじゃないか。それじゃあ、あんたの『具現心術』とやらを見せてみなよ。」 「うぇ!?」 「あ、それは私も見てみたいです。」 「ちょ、フェイトちゃん!?」 狼狽えている大地さん。でも、興味があるのは仕方ない・・・と思う・・・。 「はいはいはいはい、大地のちょっといいとこ見てみたーい!!」 「何で宴会のノリ!?」 「み、見てみたーい・・・。」 「フェイトちゃんまで!?てか恥ずかしいんだったらやらなくて良かったんだよ!?」 う、うん。ちょっと後悔してる・・・。 そうしたら大地さんは頭を軽くかいて 「俺の『具現心術』はちょっと特殊なんだ。だから、これが一般だと思わないでくれよ。」 そう言うと、彼は少しの間呼吸を整え。 次の瞬間、空気が変わった。張り詰めたと表現すべきか。 ――死線と視線が交錯する―― これは、詠唱? ――時に八又の数の名を分けろ―― それと同時に、彼の手が素早く図形を描く。 ――ゴルゴダの丘に聖者の磔―― 四角が二つクロスし、それにより分かたれた区画に数字が描かれ、中心には十字架。 ――我が魂は死神の罪―― それら全てが一つの円の中へ――。 「Cross Square!!」 その叫びで、一瞬強く図形が輝いた。私は思わず目を瞑る。 そして次に目を開くと。 大地さんの胸の前に、先ほどの図形が浮かんでいた。 それは、私たちの使う『ミッド式』の魔法陣のような、けれどもっと簡素なものだった。 「この『図形』が俺の『セルフインプリメント』だ。名前は『Cross Square』。」 「ってちょっと待ってよ。あんたさっき媒介は物質だって言ってたじゃないか。それはどう見たって魔力・・・」 いや、違う。あれは魔力じゃない。あれは・・・ 「これは純然たる『現象』だよ。俺は世界でただ一人の媒介現象の使い手なんだ。」 大地さんはそう言って、説明してくれた。 大地さんは声を媒介して『セルフインプリメント』となる現象を作り出すことができること。 そして、一度出した『セルフインプリメント』を媒介にして『具現心術』を使えること。 さらに、『Cross Square』を媒介してもう一段階上の媒介を出せるということ。 「・・・てことは、詠唱が必要なのは最初の一回だけで、後は念じるだけで現象を起こせるのか。ほとんど反則じゃないか!!」 「まあ、魔導士からするとそうなんだろうなぁ。けど、俺の世界じゃ媒介があれば詠唱なんていらないのが普通だったし。 むしろ俺みたいにわざわさ自分で『セルフインプリメント』を作らなきゃいけないのは面倒だと思うぞ。」 まあ、二段媒介はうちの世界でも反則だけど、と大地さんは呟いた。そんなことよりも 「あの、それで大地さんはどんな現象を起こせるんですか?」 「ん、ああ、そうだったな。悪い悪い。学者の癖でつい講釈をたれちった。」 てへ、と軽く笑う大地さん。・・・男の人がやっているのに意外と似合っているのが不思議だ。 「で、俺の起こせる現象だったな。俺の『具現心術』は――」 言葉を一端きり、指先をあさっての方向へ向ける。 すると、その指先から電撃が走った。それは過たず、地面の小石に命中しはじけさせた。 「電撃。正しくは『電子の大量・精密操作』だ。まあだから、起こせる事は電撃に限らないんだけどな・・・てフェイトちゃん?どした?」 私は驚いていた。なんという偶然なんだろう。 だって私の魔法は―― 「あんたも電気なのかい・・・。」 アルフが驚いたように呟いた。 「え?俺『も』?ってことは、フェイトちゃんの使う魔法って・・・」 「はい、電気の属性を持っています。」 わお、と大地さんは驚いた。本当にすごい偶然だ。 それになんだろう?ただ同じだったってだけなのに、不思議と心が温かい・・・。 「何だか親近感沸くなぁ。」 この人の持つ空気のせいだろうか?なんて暖かい笑顔をするんだろう。 そのせいだろうか。私は気がつかないうちに思ってもみなかったことを言ってしまった。 「あの、もし大地さんがご迷惑じゃないのなら、私たちに協力してもらえませんか?」 口に出してハッとした。ひょっとしたら大地さんはどこかの世界の魔導士にあたるものなのかもしれない。 つまり、『ジュエルシード』を狙っているのかも。そうしたら私たちの敵ということになるのに。 私はなんて軽率なことを言ってしまったんだろう。 だけどそれは、いい意味で裏切られた。 「ん?いいよ。てか俺は初めからそのつもりだったし。」 「え?」 今彼はなんと言った?初めからそのつもりだった? つまり、この話を切り出したときから、私たちに協力するつもりだったということ? 「なぜですか?」 当然、疑問を口にする。自分から言っておいてと、後になって思うが。 彼は答えた。 「だって今のところ行く場所のアテもないしやることもないし。」 何だか気の抜ける答えだった。私とアルフは力が抜けた。 けれどその言葉には続きがあった。 「それにこんないい子が頑張ってるんだ。年長者として応援しないわけにはいかないだろ?」 そう言って、彼は私の頭をなでた。それが何だか心地よくて。 私はしばらくの間そのまま頭をなでられていた。 「そういえばさ大地。あんたどこの世界から来たんだい?」 協力関係を結ぶことになり、私たちが今いるマンションの一室に向かう途中、アルフがそう言った。 そうだ、そういえば聞いていなかった。『具現心術』という、聞いたこともない不思議な術を使う世界。 行ってみたいかも。そんなことを思ったのは、大地さんの世界だからだろうか。 だが、大地さんから帰ってきた答えは 「ああ、俺はここの世界出身のはずだよ。」 わけのわからない答えだった。 「『次元世界』ではなく『平行世界』。あったかもしれないし、この世界ではありえなかった世界。『シュレディンガーの猫』という話があるがそもそも・・・」 そのあと、大地さんの話は3時間にも及んだ。おかげで私にも理解できたが、そのときにも驚いてしまった。 大地さんのキャラクターがよくつかめません・・・。 ********** ゴチャマゼクエストSS 『異邦見聞録』 〜麻帆良学園都市・外伝〜
魔法少女リリカルなのは
雷鳴・剣と杖
第二話・出会ってしまった『天才』二人
宴の始まる鐘の音を聞いた。
非日常の中の非日常の扉が開いた。これから始まるのは、楽しい宴。
さあ、あなたも私たちと一緒に。手にしたものは不思議との出会い。
出会った者は不思議な青年。ゴチャマゼクエスト異邦見聞録 麻帆良学園都市・外伝 魔法少女リリカルなのは 雷鳴・剣と杖の章 開演します・・・。
あんた、背中がすすけてるぜ・・・。