2008/07/27
書いてしまって後悔
気づいたら1時過ぎやもん。もうびっくり。
ほんと俺ってばチューチューラブリームニムニムラムラプリンプリンポロンヌルルレロレロ。
Side Akira Jin-nai
僕が聖祥に編入し、数日経った日のこと。僕はクラスにもなじみ始め、結構平穏な日々を送っていた。
『ジュエルシード』探しの方はあれから進展がない。平和なのはいいことだが、それが気になる。
気になる点といえばもう一つ。大空さんのことだ。
何故彼がこの世界にいるのか。あれ以来彼を見かけることはない。
僕のことを助けてくれたのだから、少なくとも敵対する気ではないはずだ。
閑話休題。ともかく、そんなつかの間の平和を享受していたある日のこと。
「じゃあ、今度の日曜日はすずかの家で遊びましょ。」
アリサがそう提案したのだ。
僕としては、『ジュエルシード』探しもあるのだから遠慮したかったのだが、アリサが強引に誘ってくる。
なのはも微妙に困ったような表情をしていたが、どうやら遊びたいとは思っているらしい。微妙に向こう側だ。
毎度のことではあるが、こうなってしまっては僕が折れるしかない。僕はため息を隠さずに
「まったく、しょうがないなアリサは。」
と承諾の意思を示す。アリサはちょっと表情を不機嫌にしていたが、すぐにそれを収めなのはに言った。
「なのは、ちゃんとユーノ連れてきなさいよ。」
どうやら、アリサ・すずかともにユーノのことは知っているらしい。とは言っても、高町家のペットという認識のようだが。
もっとも、それも間違いというわけではないだろう。実際彼は今のところ、『ジュエルシード』関係を除けば高町家のペット状態だ。
なのははそれに頷き、アリサとすずかは喜んだ。
・・・可愛がられることは、愛玩動物にとってどういう心境なのだろう?今度ユーノに聞いてみようか?
Side Yuno Scria
・・・今、何だかとてつもなく失礼な思念を受けた気がする。
今すぐ、それを否定しなければいけない気がする。
僕は心の中で叫んだ。
――僕は人間だよー!!
それが誰かに届くことは、ありえなかったが・・・。
ゴチャマゼクエストSS 『異邦見聞録』 〜麻帆良学園都市・外伝〜
魔法少女リリカルなのは
閃光と雷鳴・剣と杖
第八話・二人の魔法少女、初めての邂逅
Side Nanoha Takamachi
そして日曜日。すずかちゃん家へおでかけの日です。
すずかちゃんの家へはバスで行くことになります。
「アキラ君、準備できた?」
「ああ。と言っても、僕に準備も何もないけどね。」
私がアキラ君の部屋に入りながら聞くと、アキラ君はそう答えました。
アキラ君の格好はいつもの空色の服に濃緑のズボン。それと今日は、剣を背負っています。
・・・アキラ君の格好でこれ以外見たことないような気が。今度一緒に服を買いに行こうかな?
けど、そういえば今朝アキラ君の制服が届きました。明日からはアキラ君の制服姿が見られます。
そう考えると、なんだかわくわくします。
「なのはは準備できたの?」
アキラ君がそう聞いてきました。私は満面の笑顔で。
「もちろん!!」
そうすると、アキラ君も笑顔になりました。
「全く、お前たちは仲がいいな。」
お兄ちゃんが部屋に入ってきてそう言いました。そう言われると、何だか嬉しい。
アキラ君がくるまで、私は高町家で「一人」でした。
もちろん、優しいお母さんとお姉ちゃん、頼りになるお父さんとお兄ちゃん。周りは私のことをかわいがってくれました。
でも、お母さんはお父さんと仲良しさん。お兄ちゃんとお姉ちゃんは剣の師匠とお弟子さんでこれまた仲良し。
なんとなく、私だけあぶれてしまっていました。
けれど、アキラ君が来てから私は「一人」ではなくなりました。
アキラ君は本当のお兄ちゃんのように、いつでも私を見てくれます。それが本当に嬉しい。
だから私とアキラ君が仲良しと言われると、ますます嬉しくなってしまいます。
「二人とも、そろそろ出るぞ。バスに遅れてしまう。」
「そうなったら、僕が皆を運びますよ。」
アキラ君はそんな冗談を言いながら――でも、冗談じゃないんだろうなぁ――部屋を出ました。
そのあとに続いて、私も出て行く。
お兄ちゃんは少し笑いながら、部屋を出て扉を閉めました。
Side Daichi Ohzora
前回『ジュエルシード』を封印してから早1週間。進展はない。
『ジュエルシード』が見つからない日々が経過するにつれて、明らかにフェイトちゃんは焦りを増していった。
自分の体も省みず、広域探索の魔法を使用する。それでも見つからなければ飛行魔法を使って目視で探す。
そんなことを繰り返していた。
当然俺は何度も止めた。けど、あの悲しそうな目で見つめられると、強く止められない。
俺にできることは、せいぜい栄養のつく料理を作ってやることと、夜の睡眠をしっかりとらせてやることのみ。
今はこの身が魔導の力を持たないことが、ただただ悔しかった。
そんなある日のこと。
「・・・見つけました。」
「本当か!?」
フェイトちゃんの広域探索の魔法に、『ジュエルシード』が引っかかった。
どうやらこの広域探索、休眠状態の『ジュエルシード』は見つけられないらしい。そのことをアルフから聞いた。
だからこそフェイトちゃんはこうやって毎日毎日膨大な魔力を食わせて広域探索を続けていたのだ。
だが今日は見つかった。ということは、その『ジュエルシード』は活動を始めてるということ。
場合によっては戦闘が必要ということだ。
「行きましょう。」
「待った。」
すぐにでも飛んで行きそうなフェイトちゃんを、俺は止める。フェイトちゃんもアルフも少し怪訝そうな顔で俺を見る。
「今回も前回と同様、戦闘は俺一人でやる。フェイトちゃんの体調はあまり良くないからな。どう考えたって俺が戦った方がいいに決まってる。」
俺一人でも、暴走状態を止めることはできる。それは前回の封印のときにわかっている。
だが、それで異を唱えようとするフェイトちゃん。
「でも、本当に危険なんです!今回は私も協力して」
「だめ。許可しない。今のフェイトちゃんを戦わせる方がよっぽど危険だ。」
フェイトちゃんの気持ちは嬉しい。俺の身を案じてくれているのだ。
本当にいい娘だと思うが、今回は俺の言うことを聞いてくれ。
フェイトちゃんは何か言いかけたが、俺がこうなっては聞かないということを理解しているのだろう。しぶしぶ頷いた。
「でも、本当に危険だと思ったときには、私も加勢しますから。」
「ああ、そうなったときは頼むよ。」
俺は微笑んでフェイトちゃんの頭を撫でた。それで、くすぐったそうな表情をするフェイトちゃん。
だが、俺の内心は真逆の表情をしていた。
これ以上、この子につらい思いはさせない。させたくない。
もし、彼女に危害を加えようとするものが現れたなら、それが何者であれ俺は許さない。
それがたとえ、神であろうとも。
フェイトちゃんは空を飛んでいこうと思っていたらしいが、飛行魔法だって魔力を食う。おまけに、俺は――条件付きでは可能だが――基本的に空が飛べない。
よって、徒歩になる。当然、俺がフェイトちゃんを負ぶるスタイルだ。
フェイトちゃんは顔を真っ赤にして断ったが、俺は有無を言わせなかった。
・・・闘いの力にしかなれないんだから、せめてこれぐらいはさせてくれ。な、フェイトちゃん。
Side Akira Jin-nai
バスに乗り海岸線を行き、山の中に入り森を歩くことしばし。
どでかいお屋敷が姿を現した。
「すご・・・。」
僕は思わずそうもらした。
ここがすずかの家らしい。いいとこのお嬢様だとは思っていたが、まさかここまでだったとは。
ちなみにユーノも同じ気持ちらしく、呆けた表情で屋敷を見ていた。
「まあ、初めて見た人はそう思うよな。」
「すずかちゃんちおっきいもんね。アリサちゃんちもだけど。」
どうやら月村家だけでなくバニングス家も規格外らしい。まあ、アリサの家は大貿易会社だから納得だけど。
高町家でも結構大きいな〜とは思ってたけど、上には上がいるものだ。
・・・まあ、本当はさらに上も知ってるんだけどね。家とお城は比較しちゃだめだよね?
そんなことを考えていると、恭也さんがインターホンを押した。
『はい。』
すると、間を置かずインターホンから女性の声が流れた。
「ノエル。俺だ。」
『恭也さま、いらっしゃいませ。防犯装置は切ってありますので、どうぞ門をお通りください。』
ノエルさんというのはこの家のメイド長だと、なのはが教えてくれる。
ところで、恭也さんが『防犯装置』という言葉で苦虫を噛み潰した表情をしていたのだが?
「どうしたんですか、恭也さん。」
「いや、この家の防犯装置にはいやな思い出があってな・・・。」
そういいながら、恭也さんは歩を進める。
と。
ビー、ビー!!
『金属反応検知!金属反応検知!不審者進入の危険あり!!迎撃を開始します!!』
けたたましいアラームとともにレッドランプがそこかしこに点り、草陰から大量の機械兵が現れた!!
・・・金属反応って。
「これ、かな?」
僕が自分の背負っている剣を指すと、恭也さんもなのはも引きつった顔をした。
「何でそんなもの背負ってきたんだ、アキラ君!!」
「いや、そんなこと言われましても!?」
「ど、どうしよう、どうしよう!?」
大パニックである。とりあえず、僕はなのはを抱え、恭也さんとともに全速力で屋敷の方へ離脱した。
結論から言うと、機械兵の包囲網から何とか無事脱出することに成功した。
しかしあの機械兵、致死的な攻撃も仕掛けてきていた気が・・・。レーザー光線ってなんだよ。
どうやら、以前恭也さんも引っかかったことがあるらしい。なるほど、あれは結構トラウマになるな。
「いらっしゃい恭也・・・てどうしたの?凄い顔して。」
「どうしたの、じゃない!!」
屋敷の二階から降りてきた女性――なんというか、すずかをそのまま大きくした感じだ、お姉さんだろうか――に、食って掛かる恭也さん。
「防犯装置が作動したんだよ!しかも忍、お前またあれ改造しただろ!!死ぬかと思ったぞ!!」
「大丈夫よ、恭也は殺したって死なないんだから♪」
あっけらかんと言うその人――どうやら忍さんというらしい――は、そう言ってから首をかしげた。
「でも変ねぇ、防犯装置はちゃんと切っておいたはずなんだけど・・・。」
「あ、あのすいません。実は僕のせいなんです。」
僕は背中の剣を外しながら言った。それで忍さんはこちらを見る。
「あら、見ない顔の子ね。あなたがすずかの言っていた新しいお友達かしら?」
「はい、神内アキラといいます。よろしくお願いします。」
僕は頭を下げた。それを見て、忍さんは微笑み
「ご丁寧にどうも♪私は月村家の当主ですずかの姉の忍です。よろしくね。」
「忍さんは、お兄ちゃんの彼女さんなんだよ。」
と注釈を入れてくれるなのは。・・・親しそうな関係だとは思ったけど、なるほどそうだったのか。
「それで、あなたのせいっていうのは?」
「はい、僕がいつも肌身離さず持ち歩いているこの剣が金属探知機に引っかかってしまって・・・。」
『剣』というワードで少々眉をひそめる忍さん。・・・まあ、そうなるよね。剣なんて持ってたら、この世界じゃどう考えても不審者だ。
「忍、その剣はアキラ君の父の形見なんだ。大目に見てやってくれ。」
「あら・・・、そうだったの。ごめんなさいね、疑ったりして。」
「いえ、警戒するのは当然のことですよ。僕は気にしてません。」
ありがとうございます、恭也さん。
「そういうことだから、アキラ君が遊びに来るときは金属探知機もちゃんと切ってくれ。」
「そうね、そうするわ。」
そうやり取りし、僕たちは屋敷の奥へと案内された。
Side Suzuka Tsukimura
私とアリサちゃんは、テラスでお茶を飲んでいた。傍らにはメイドのファリンがいる。
私たちはなのはちゃんとアキラ君を待ちながら、談笑していた。
そんなとき、突然門の方で大きな音が聞こえた。あの音は・・・防犯装置?
「あれ、今日は来客だから防犯装置は切ったはずじゃ・・・?」
うちの防犯装置は、私から見てもやりすぎている。レーザー兵器なんて置いてあるのだから。
お姉ちゃんの趣味なんだけど、止められる人がいない。だからエスカレートする一方なんだけど・・・。
「・・・アキラのやつ、まさか剣持ってきたのかしら?」
「あ・・・。」
凄くありうる。あの剣はアキラ君にとってとても大切なものらしいから。
でも、そうだったとしたら危険物反応で防犯装置が作動しちゃってるかも・・・。
「だ、大丈夫かな?」
「だ、大丈夫よきっと!恭也さんもいることだし、それにほら、士郎さんがアキラは凄腕の剣士だって言ってたじゃない!!」
そうは言っても心配なものは心配だ。三人とも、怪我がないといいんだけど。
ちなみに、この心配は杞憂でした。数分後、全くの無傷で三人とも現れたから。
「それじゃ、子供は仲良く遊ぶんだぞ。」
そう言って、恭也さんはお姉ちゃんと一緒に奥へ消えた。
「アキラ君、お疲れ様。」
「ああ、いや、ほんと疲れた・・・。」
アキラ君は椅子に座るとぐてっと倒れた。話を聞くと、なのはちゃんを背負った状態であの防犯装置をかいくぐったらしい。
「あの防犯装置はどう考えてもやりすぎでしょ。相手の回避行動を先読みして、おまけにフォーメーションを組んで追い込むって何それ?」
「ていうかそれを全部よけるあんたの方が驚きよ。」
アリサちゃんが感心とも呆れともとれるようなことを言った。
「ご、ごめんね。お姉ちゃんのお手製防犯装置だから、ちょっとやりすぎなところがあって・・・。」
「・・・。」
『お姉ちゃんのお手製』という言葉でどこか遠い瞳をするアキラ君。そして一言。
「この街は、びっくり人間大集合なんだね。」
否定はできませんでした。でもね、アキラ君?
アキラ君がその『びっくり人間』の最たるものだっていう自覚は、持った方がいいと思うよ。アリサちゃんも呆れてるし。
Side Akira Jin-nai
その後、僕たちは談笑したり、トランプゲームで遊んだりした。
何故か、アリサが張り合ってきて、いつも僕とアリサの一騎打ちになっていたが。
そうして、どれくらい経っただろうか?
なのはが、驚いたようにどこか遠くを見た。・・・魔法関係で何かあったのだろうか?ひょっとして『ジュエルシード』?
僕はなのはの肩にいるユーノに目配せした。ユーノはそれで僕の意図に気づき、僕の肩に移った。
「(ひょっとして、『ジュエルシード』か?)」
「(はい、近くで発動しています。今から僕がここから抜け出して、それを追ってなのはがここを抜け出す手はずになっています。)」
「(OK。なら僕は、それからしばらく経ってから抜け出す。僕なら数百メートル離れていても、数秒で駆けつけられるからね。)」
「(あ、あはは。頼りにしてます。)」
それだけ言うと、ユーノは僕の肩を蹴り、一目散に走り去っていった。
「あ、ユーノ君!!」
そのあとを、なのはが追う。
僕はこのあとしばらくしてから、何か理由をつけてここを抜け出せばいい。
「ユーノ君、どうしたの?」
すずかが聞いてきた。
「猫におびえたんじゃないかな?ここ猫多いし。」
僕は適当に答えるが、実際ここは猫が多い。猫屋敷と言ってもいいぐらいだ。どうやらすずかが拾ってきているらしいが。
だから、それっぽい理由にはなっただろう。
「心配はないでしょ。しばらく待って帰ってこなかったら、僕が探しに行くよ。」
「え、でもアキラ君大丈夫?うち初めてなのに・・・。」
家ぐらいで迷っていたら、ダンジョンの攻略なんてできないよ。
「大丈夫だって。こう見えても方向感覚と空間把握はしっかりしてるから。」
僕の笑顔で、すずかはちょっと安心したようだ。
それにしても。
(何もこんなときに発動しなくてもいいのになぁ・・・。)
なのはがいなくなって少し心配そうな表情をしたアリサとすずかを見て、僕はそう思った。
それからしばらくして、僕はそこを抜け出し、一陣の風になった。
Side Nanoha Takamachi
私は今、『ジュエルシード』の反応があった場所に向かって走っています。私の肩の上には、屋敷を抜けてすぐに合流したユーノ君。
ちなみに、レイジングハートはもう起動して、私はバリアジャケットを着ています。
「なのは、そこを右に!!」
ユーノ君の指示に従って現場に向かう。私の感覚よりも、ユーノ君の感覚の方が優れているので、それを頼りにする。
そしてしばらく走ると。
『・・・・・・・・・でか。』
完全にユーノ君と声をはもらせて、『ソレ』を見ました。
それは一匹の子猫?でした。何故?かというと、その子猫は体長が一軒家ほどもあったからです。
「た、多分この子の『大きくなりたい』という願いを、『ジュエルシード』が正しくかなえた結果・・・だと思う。」
かなり自信なさげなユーノ君。・・・『ジュエルシード』のかなえる願いって、結構適当なのかも。
「と、とにかく封印しよう!ユーノ君、結界を!!」
「わ、わかった!!」
魔力の漏洩を防ぐため、ユーノ君が結界を張る。
同時に、景色が色を失っていく。
「よぉ〜し!!」
私はレイジングハートを構えた。けど。
「ま、待ってなのは!!おかしいよ、僕はまだ結界を張っていない!!」
「え!?」
ユーノ君に止められました。じゃあ、この結界は一体誰が?
「初めまして、かな。お嬢ちゃん。」
突然、向こうの方から声をかけられた。
そちらを見れば、そこには白衣を着た男の人が一人。お兄ちゃんより少し年下な感じの人。
そしてそのすぐ後ろに黒い――恐らくはバリアジャケットを纏った金髪の少女と、赤い狼がいました。
「あ、あなたたちは何者ですか!?」
ユーノ君が警戒しながら叫ぶ。けれどその男の人は余裕を持って一礼し。
「大空さん・・・。どういうことか説明していただけますか?」
言葉を発する前に、いつの間にか私のそばにいたアキラ君の言葉に遮られました。
アキラ君はすでに剣を抜き放ち、射抜くような目つきで男の人をにらんでいました。
これが私たちと、もう一組の魔導士との初めての出会いでした。
Side Fate Testarossa
私たちが現場につくと、そこにはすでに一組の魔導士が来ていた。
それを見て、お兄ちゃんはアルフに結界を張るよう指示を出した。
アルフの結界が張られると、向こうの魔導士があわて始めた。
そこへ、余裕の表情でお兄ちゃんは声をかけた。
「初めまして、かな。お嬢ちゃん。」
その声に反応して、その魔導士はこちらを向いた。
「あ、あなたたちは何者ですか!?」
魔導士の肩に乗ったフェレット――多分彼女の使い魔だろう――が、警戒の叫びを上げる。
それにお兄ちゃんは一礼し。
その瞬間、疾風が吹いた。そうとしか表現できない。
そして、彼女の傍らに剣を携えた少年が一人。
「大空さん・・・。どういうことか説明していただけますか?」
その少年はお兄ちゃんをにらみつけながらそう言った。――彼が『閃光の勇者』なのだろうか?
私はバルディッシュを握る力を強め。
「よう、アキラ君だったな。元気か?」
けれどお兄ちゃんはまるで緊張感を持たず、親しげにその少年に声をかける。・・・ちょっと力抜けるかも。
こういうところがお兄ちゃんのお兄ちゃんらしいところなのだろうけど。
しかしその少年は眼光を緩めずに――いや、さらに強めて言った。
「質問に答えてください。説明していただけるんですか?」
おお怖い、とお兄ちゃんは肩をすくめる。
「OKOK、説明するからそのきっつい殺気収めてくれると嬉しいな。」
お兄ちゃんのその言葉で、少年の眼光がやや緩む。それと同時に私は呼吸を再開する・・・?
今、私は呼吸をできていなかった?息が荒く、動悸も激しい。
たったあれだけのやりとりで?それも、私はただ見ているだけだったのに。
「それでは、僕の質問に答えてください。何故あなたがここにいるんですか?」
「それについては俺もよくわからん。どうやら『ヤツ』の召喚で呼ばれた感じなんだが、肝心の『ヤツ』がいなくてな。
そういう君はなんでここにいるんだい?」
「・・・僕もよくわかっていません。ただ、何らかの事故によって飛ばされたものと考えています。
ひょっとしたら大空さんがここにいるのは、その事故の余波かもしれません。」
私たちに理解できない話を、その少年とお兄ちゃんは交わす。見れば、向こうの魔導士もよく理解できていないようだ。
「じゃあ、次はこっちから質問してもいいか?君は――君たちは『ジュエルシード』を集めているのか?」
お兄ちゃんの問いを受け、少年の眉がぴくりとあがる。
「・・・答えはYesです。では、大空さんたちも『ジュエルシード』が目当てだと考えていいわけですね。」
「その通りだ。詳しいことは話せんが、その『ジュエルシード』が入用なんだ。」
私の名前は一切出さなかった。
「君たちは何で『ジュエルシード』を集めているんだ?」
「『ジュエルシード』はとても危険なんだ!!」
答えたのは魔導士の使い魔だ。向こうは危険物だから回収しに来ているのかも。
ということは、管理局の人間・・・?
「だから、あるべき場所に保管すべきなんだ!!」
「・・・ふむ、一理あるね。」
お兄ちゃんは何か思案気に頷いた。
そしてお兄ちゃんは、とんでもないことを口にした。
「なあ、ものは相談なんだが、そっちが持ってる『ジュエルシード』、しばらく貸してはもらえないかな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
『はぁ!?』
全員の声がハモりました。
Side Yuno Scria
今、彼はなんと言った?『ジュエルシード』を貸してくれ?
『渡せ』ではない。『貸してくれ』と言ったのだ。
「な、あなたは何を考えているんですか!?」
僕の叫びに、しかし青年はいたって冷静に。
「いやね、俺は別に君の言い分に反対意見があるわけではないのよ。ただ、ちょこっと『ジュエルシード』が入用で、それが終わったら別にいらないのよ。」
「ちょ、お兄ちゃん!?」
向こうの魔導士の少女が何か言いたそうにしていたが、青年は聞こえないふりをした。
「だから、しばらく共同戦線をしいて、協力して『ジュエルシード』を回収。それでこっちの用が終わったら、あとはそっちに全部返す。それで良くね?」
「で、でも・・・。」
そこで彼の纏う雰囲気が一変し、僕はそれ以上言葉を続けられなかった。
「いいかい?これは嘆願であると同時に譲歩でもあるんだよ。いつの世もそうだ。話し合いが上手く行かず、決裂した際、人間がとる行動はただ一つ。」
「戦争、ですか。」
アキラさんが青年の言葉を引き取って言う。その表情はどこか辛そうだった。
青年は頷き。
「そうだ。それに君と俺の戦いの場合、それはまさしく戦争だと思うしね。そんなの俺も君も望むところじゃないだろ?」
「・・・確かに、その通りではありますね。」
アキラさんが頷く。戦わなくてすむなら、それに越したことはないけど・・・。
「だから、ここはこの話に乗っておくのが得策だと思うけど?」
「・・・最後に一つ、質問があります。あなた方が『ジュエルシード』を使ったとして、それが帰ってくる保証はあるんですか?」
そう、それが最大の問題だ。『ジュエルシード』は立派な『古代遺産』。魔導士ならばのどから手が出るほど欲しいもののはず。
ひょっとしたら、返ってこないかもしれない。
青年は少々考え。
「どうなんだろう?」
傍らの少女に聞いた。・・・彼が必要なんじゃないのか?
そしてその少女も目を伏せて首を横に振り。
「わからない。」
と言った。
「なら、あなたたちに『ジュエルシード』を渡すわけには行きません。」
アキラさんは剣を構えた。戦闘態勢。
なのはも慌ててレイジングハートを構える。
「交渉決裂、か。」
青年はため息をつきながら、すっと指をあげる。
少女はデバイスを構え狼はうなり声を上げる。あの狼、使い魔か。
僕も、いつでも防御魔法を起動できるように構える。
そして、両者の間にしばし緊迫した空気が流れ。
次の瞬間、アキラさんが一息に青年の懐まで飛んだ。
Side Daichi Ohzora
俺への一撃はフェイトちゃんが防いでくれた。あの速さに対処できるとは、大したものだ。
「そのまま時間を稼いでくれ!!」
俺の言葉に、フェイトちゃんは頷く。どこか嬉しそうなのは気のせいか?
ともかく、その隙に俺は『セルフインプリメント』を作り出す詠唱を唱える。
――死線と視線が交錯する――
――時に八又の数の名を分けろ――
――ゴルゴダの丘に聖者の磔――
――我が魂は死神の罪――
「Cross Square!!」
詠唱の完成とともに、俺の眼前に現れる図形。
「デバイス!?いや、あんなの見たことがない!なんなんだ!?」
初見にしてはそのあまりの現象に、敵方の少女とその肩に乗るフェレットもどきが驚く。
やつも使い魔というやつなのだろう。ということは、アルフ同様、何がしかの魔法攻撃をしてくると考えられる。あれにも気をつけなければ。
それはともかくとして、俺はフェイトちゃんを見やる。
するとそこには、視認することも難しいほどのスピードで打ち合うフェイトちゃんとアキラ君がいた。
・・・アキラ君の運動能力も大概人間離れしているが、フェイトちゃんもフェイトちゃんだよなー。そういえばこの二人、戦闘形態似てるんじゃね?
そんなことを考えながら、俺はフェイトちゃんを援護すべく、荷電粒子を作り出す。
「後ろに飛べ!!」
俺の指示に即座に従い、後ろに飛ぶフェイトちゃん。それに追撃しようとするアキラ君。
「させるか!くらえぃ、荷電粒子つぶて!!」
気の抜ける名前とともに、無数の荷電粒子のつぶてを発射する。
荷電粒子砲ほどの威力はないが、あたればそれなりに痛いはずだ。
だが、アキラ君は即座に方向転換し、難なく荷電粒子の雨をかわす。なんつう回避能力だ。
――ここまでの攻防でわかったことを整理しよう。
アキラ君の機動力は相変わらず半端ない。だが、彼が本気にならない限り、フェイトちゃんなら何とかついていけるだろう。
だが、俺やアルフではあれについていくことはできない。せいぜい牽制が精一杯だ。
彼に一発当てるには、逃げ場もないほどの広範囲に攻撃をしかける必要がある。が、それをやるとフェイトちゃんやアルフまで巻き込む可能性がある。
もしくは、罠にかけて動きを封じるとか。こっちの方が現実的ではあるが、そう簡単にかかってくれるかどうか。
魔導士の少女は突然始まった戦闘に困惑しているようだ。彼女に関しては特に警戒する必要もないだろう。
彼女の一発の凄さは知っているが、あたらなければ意味がない。
あとは彼女の使い魔と思しきフェレットもどき。やつに関してはまだ警戒しておくべきだろう。まだ手札を見ていないから。
ともあれ、今最優先に対処すべきはアキラ君。それならば。
俺は瞬時に思考をめぐらせ、次なる一手をとった。
Side Alph
あたしはフェイトの援護ができずにいた。
あのアキラとかいうぼーず、とんでもなく速い。フェイトと同じぐらい、いや、下手したらそれ以上だ。
なのに魔力は一切感じられない。純粋な体術であれだけの動きをしているってのかい?信じられない。
だけど、逆にあの大地が警戒するだけのことはあると思う。
「後ろに飛べ!!」
大地が叫んだ。それですぐにフェイトは後ろに飛んだ。
それを追撃しようとするが。
「させるか!くらえぃ、荷電粒子つぶて!!」
・・・何なんだいその名前は。ともかく、大地がいくつもの光の玉を生み出し、ぼーずに向かって撃った。
決まった、と思ったが、それはぼーずが急速に方向転換することで難なくかわされた。あれをかわすか!?
「遠距離から攻撃するんだ!!」
大地の声が響いた。それでフェイトが頷く。
「バルディッシュ!!」
『Arc saber.』
バルディッシュが鎌状の魔力刃を形成し、それを投げつける。
ぼーずは回避しようとするが、その方向へ追っていく。
これなら、たとえ防御しようとも刃が回転しているため、しばらく動けなくなるはずだ。そこであたしが一発入れてやる!!
が、その予想に反して。
「閃空剣技・空剣!!」
ぼーずは目にも止まらぬ速さで剣を振りぬき、それによって生まれた何かでアークセイバーをたたき落としてしまった。
何だい今のは!?魔力は一切感じられなかったよ!?
あたしはぼーずに向かって走っていたが、急制動をかけた。そこに一瞬の隙ができる。
次の瞬間、ぼーずはあたしの目の前にいた。今の一瞬で間を詰められた!?
フェイトは今の遠距離攻撃のため近くにはいない。射撃魔法を使おうにも間に合わない。万事休すか・・・!?
「ごめんなさい。」
ぼーずは小さくそれだけつぶやき、剣をあたしに向かって振り下ろす。
がきん!!
だが、それがあたしに直撃する前に、硬い金属音を立てて何かに阻まれた。今のは・・・?
「・・・すっかり忘れてました。あなたのその剣のこと。」
ぼーずが一瞬で後ろに飛び、大地に向かって言った。あたしはそちらの方を見る。
すると、そこには大地が一振りの赤い長剣を持って立っていた。その剣からは長い長い鎖が伸びている。
「ちぇ、まずったな。ほんとはこっそりと罠を張ってこれで身動きを封じるつもりだったんだけどな。」
「その割には、今の行動に後悔してないみたいですね。」
まあね、と鼻の頭をかく大地。・・・あたしは大地の足を引っ張っちまったのか。
「悪い、大地・・・。あたし・・・」
あたしは大地の近くまで戻り、謝った。だが大地は
「いいって。お前が無事だったんだからそれでいい。それに、こっそり罠を張るのが無理になったんなら、堂々と張ればいいだけだ。反省会は後だ。」
と、こともなげに言った。フェイトもこちらに戻ってくる。
これで、振り出しに戻る。
実質、3対1。けれど、この戦いはまるで先が見えなかった。
Side Nanoha Takamachi
私はただただ、目の前で繰り広げられる戦いを見ているだけでした。アキラ君がこんなに強いなんて。
この前の『ジュエルシード』の封印のときでアキラ君の強さを知った気でいましたが、あんなのは全然アキラ君の本当の強さのうちに入っていないみたいです。
アキラ君は3人を同時に相手にして戦っている。なのに私は一切手が出せず見ているだけ。
――何だか急に、アキラ君が遠く離れたところにいるように感じられた。
いやだ。置いていかないで。私を隣にいさせて。
私を一人にしないで。
すがるように、私はレイジングハートを巨大子猫さんに向けた。
『Sealing mode.』
私の意志を汲み取り、レイジングハートは『ジュエルシード』を封印するための形になる。
「な、なのは!?」
ユーノ君が困惑の叫びを上げたが、私の耳には届かなかった。
今の私にはこれしかできないのだから。アキラ君のそばにいるためには、これしかないのだから。
私はただ一心に『ジュエルシード』を封印することだけを考えた。
それがいけなかったのか。
「させない!!」
黒の少女が、疾風のような速さで私に向かってきていた。
私ははっと我に返りそちらを見ましたが、私の運動神経では反応することができるわけもなく――
ざん、と。
何かを裂くような音が森に響きました。
Side Akira Jin-nai
大空さんが赤い長剣を構えている。確か、あれの名前は『縛雷』。
この間の青い大剣――『天雷』と対になる、彼の力の一つ。
天雷ほどの攻撃力はないが、鎖により動きを封じたり、鎖鎌のように変幻自在に動かせる厄介な武器だ。
僕がそう考えていると、大空さんが一歩前へ出る。
「ここからは俺が相手をしようか。」
そう告げ、左手に持った縛雷をこちらに向ける。――一対一を申し込んできているのか。
彼の速さは――反応速度は凄いが、運動速度という意味では、僕についていけるはずもない。
何を考えているのかわからないが。
「いいでしょう、受けて立ちます。」
断ることは剣士の誇りが許さない。僕は閃光の剣を両手で構える。
「お、お兄ちゃん!?」
「大丈夫だって。我に秘策ありだ。」
向こうの魔導士の少女が不安そうに彼を止めるが、彼は軽く笑って前へ進む。
「慕われているんですね。」
「まあな。そんなわけで、可愛い妹の手前、俺は負けるわけにはいかない。侮ると痛い目を見るぜ。」
負けるわけには行かない、か。それは僕も同じだ。
導くと誓った妹分のために。彼女の道しるべとなるために。
「僕だって負けられない。油断すると痛い目を見ますよ。」
『閃光の勇者』として。僕は剣を構え彼を見据えた。
にらみ合いは一瞬か。それとも永久か。
僕は地面を弾き、大空さんと激突した。
火花を散らす二本の剣。さらに剣を振るう。
二合、三合、さらに激突させる。
方や『速さ』の究極の概念が乗った剣、方や『怨嗟ヲ縛ル地獄ノ雷』。
折れることを知らない二刀は、盛大に火花を散らしていった。
一体何合打ち合ったかわからない。彼は僕にしっかりと反応しついてきている。
だが、体力はそうはいかない。打ち合えば打ち合うほど、限界を超えたスピードを出している大空さんの体力は大幅に削られる。
このまま行けば、僕の勝ちは揺るがない。
が、それが腑に落ちない。彼は『天才』の名をほしいままにする、文字通りの天才。
このまま無策に終わるとはとても思えない。それが気になって、攻めきれないでいる。
そのままさらに数合、僕たちは打ち合った。
――考えても結論が出ないなら仕方ない。ここでしかける!!
僕は一際強く剣を振るった。それで、大空さんが大きくよろめく。
ここだ!!
放つは閃空追技の閃剣。
「レイジングハート!!」
『Sealing mode.』
なのはの声が響いたのは、まさにそのときだった。
同時に、黒の少女が動いた。
まずい!あの速さはなのはじゃ反応できない!!
僕は大空さんへの追撃をやめ、大急ぎでなのはの元へ駆けつけた。
間に合え!!
そして。
ざん、という音が森に響いた。
「あ、アキラ・・・君?」
「なのは・・・、怪我はない・・・?」
なのはが目を見開いて僕を見ている。驚いたような顔をして。
僕は今の瞬間、黒の少女より速くなのはにたどり着き、彼女を突き飛ばした。
だが、そこで黒の少女に反応する時間はなかった。彼女の展開した黄色い鎌状の魔力刃で背中を斬られた。
感覚からして、裂傷にはなっていないようだ。だが体中が痺れ、ごっそりと体力を奪われたような感覚だ。
ひょっとしたら、外傷は与えない魔法だったのかもしれない。だが、戦闘という意味では十分なダメージだ。
僕は黒の少女に向き直り、なのはのそばまで飛んだ。
が、上手く着地できず膝をついてしまう。
「アキラ君!!」
なのはが悲痛な叫びをあげる。・・・情けない、彼女を導くと誓ったのに、こんな顔をさせてしまうなんて。
僕はこれ以上なのはが辛くならないように、笑顔を作り。
「平気だよ。僕は大丈夫。」
ちょっと無理をした。でも、それは逆効果で、なのははより悲しそうな顔をした。
「ごめんなさい・・・。でも、これで私たちの勝ちですね。」
本当に申し訳なさそうな、悲しそうな表情をしながら、黒の少女は黒いデバイスを僕に向けて言った。
・・・いや、まだだ。まだ諦めない。
「どう、かな。僕はまだ戦える。」
「無理です。魔法は非殺傷設定だったけど、しばらくはまともに動けないはず。」
非殺傷設定か。そんなのがあるとは驚きだな。
しばらくまともに動けないという言葉に偽りはなさそうだ。体に上手く力が入ってくれない。
・・・体が動かないなら、動ける状態にしてやればいい。
僕には二つの選択肢がある。『神力解放』と『アーティファクト』。
神力解放はどう考えてもやりすぎだ。ここら一体焦土と化すだろうし、僕の体も持たないだろう。
だから、僕が使う手段はアーティファクト。僕はポケットから仮契約カードを取り出し。
「来・・・!?」
だが、僕がアーティファクトを呼び出すよりも速く、鎖が僕を、なのはを、ユーノを締め上げた。
「な、何これ!?」「うわ!?」
「何かしようとしたみたいだけど、無駄だよ。ケツァクウァトル。縛雷の技の一つだ。
君は一対一の戦いに集中していて気づかなかっただろうけど、もういつでも君たちを縛れるように鎖を配置してたんだよ。」
しまった・・・、あの剣の特性は知っていて、警戒していたはずなのに!!
「気づかなかったのも無理はないよ。俺がそうなるように仕組んだんだから。
俺は君の注意力を絞るためにわざと一対一を申し出た。そして常に鎖が君の死角になるように、君の動きを制限してたんだ。」
それにしたって不自然な動きは一切なかった。なんという技量。
僕は大空さんを『学者』だと思って侮っていたのか・・・!
「初めから奥義を使って、俺を殺しにくるべきだったね。」
大空さんの言葉に、僕は一瞬強い動揺を感じた。が、すぐにそれを抑え、言う。
「・・・そんなこと、僕は絶対にしない。なのはを導くって決めた。僕のようには絶対しないって。」
意志強く、言い放つ。それで大空さんは心底安心した表情を見せた。
「よかったよ、君がいいやつで。これなら、妹を安心して戦わせられる。
けど、今回は俺たちの勝ち。悪いんだけど、しばらく眠っててもらうよ。」
大空さんはそれだけ言うと、僕たちを縛る鎖に、意識を刈り取るほどの、それでいて命に別状はないだけの電流を流した。
それで、僕の意識はブラックアウトした。
目覚めはあまり時間を置かなかったようだ。だが、全てが終わったあとだとわかった。
あたりの景色は戻り、巨大子猫は僕の足元で元の子猫に戻り眠っている。
なのはとユーノも起きだしてきた。
・・・負けてしまった、か。
「ごめん、なのは、ユーノ。あれだけ偉そうなこと言っておいて、僕、負けちゃった。」
あはは、と乾いた笑いをあげる僕。こんな僕になのはを導く資格なんて、あるわけない。
そう思ったけど、なのはは勢い良く僕の手を握って言った。
「謝るのはこっちの方だよ。私が余計なことしなければ、アキラ君は勝ててた。私は戦いについていけないでおろおろしてただけで、だから謝るのは私の方で・・・」
「いや、彼は言ってた。もういつでも僕たちを縛れたって。だから、彼の作戦に気づけなかった時点で僕の負けだったんだ。なのはは何も悪くないよ」
「でもでも!!」
いつか以来の言い合いをする僕ら。その傍らでおろおろと僕となのはの間を行き来するユーノ。
そんなことをしばらくしていると。
ぷ。あはははは。
どちらからともなく笑えてきた。
そのまま、しばらく僕らは笑い続け。
「・・・なのは、僕、強くなるよ。もう絶対負けないように。なのはを導く者に相応しくなれるように。」
僕はそう言った。するとなのはは首を横に振り。
「私もアキラ君と一緒に強くなる。アキラ君の隣に立って戦えるぐらい。」
そう言った。
・・・それもいいかもしれない。隣に立ちながら導く。
そういうスタイルの方が、僕にあってるかもだしね。
そうと決まれば、早速明日から訓練だ。僕たちは月村邸に戻りながら、訓練メニューを考えた。
Side Nanoha Takamachi
意識を失う直前にアキラ君が言った言葉。
『そんなこと、僕は絶対にしない。なのはを導くって決めた。僕のようには絶対しないって。』
あれは、どういう意味だったのだろう。
殺人は何があっても絶対にいけないことだ。これは絶対。だからアキラ君の言ったことは当然。
だけど、気になるのは最後の一言。
『僕のようには絶対しない』
どういうことだろう。アキラ君は一体過去に何をしたんだろう。
まさかアキラ君は、過去に人を・・・?
うすら寒い何かを感じ、私は慌てて首を横に振る。そんなことない、そんなことあるわけない。
けれど否定すればするほど、その考えは私の背中に張り付いて離れませんでした。
ねえ、アキラ君。『導く』なんて言わないで。遠くに行かないで。
どんな過去があったって、私はアキラ君のそばにいるから。
だから。
私ヲ一人ニシナイデ。
Side Daichi Ohzora
正直ぎりぎりだった。あの白い魔導士の横槍がなかったら、押し切られていたかもしれない。
フェイトちゃんの疲労が少なくてすんだのが幸いか。
しかしアキラ君か。俺は一度剣を交えていたから、ある程度の人となりは知っていた。
けど、予想以上にまっすぐないいやつだった。親友で幼馴染の炎と同系列だな。ちょっと方向性は違うけど。
そして、そんな彼に導かれているなのはという少女――あの白い魔導士のことだろう。
彼らなら、ひょっとしたらフェイトちゃんの友達になってくれるかもしれない。
今は互いに争う身となってしまっているが、これが終わったらと、そんな夢想をする。
「お兄ちゃん?どうしたの?何だか顔が緩んでるけど・・・。」
「え、マジ?」
どうやら、その考えが顔に出てしまっていたらしい。
――だけど、そんな未来が来るといいな。
今はまだ遠い未来だけど。俺はそれを願わずにはいられなかった。
『ジュエルシード』を一つ獲得し、俺たちは帰路についていた。
なのはのフェイトへ「名前を呼んで」フラグすっ飛ばし。あとで回収しなきゃなぁ。
あと、なのはぶっ壊れました。そしてユーノは相も変わらず空気・・・いや、今回はまだましな方か。
つうか今回は、リリカル勢全体的に空気の希ガス。まあ、戦闘パートだとどうしてもね。アキラの戦闘力異常だし。大地高速思考過ぐるし。
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