2008/07/31
久々みなみけ
リリカルなネタがでないので、みなみけで我慢してください。
今回はあたし?
や〜、照れるな〜。
あ待って待って、やるからやるから!!
え〜っと、それじゃあ・・・・・・・・・ねえ、こういう場合ってどういう風に言えばいい?丁寧に?それとも個性的に?
ああ、わかったわかったわよ!やるから!邪魔しないで!!
この物語は南家三姉妹+αの微妙な非日常を混沌と?描くものです。でも、過度な期待はしないでね。
あと、部屋は明るくしてディスプレイ?の輝度??を落としてから見てね。お願い。
「どんなもんよ!!」
「アスナさん・・・、絶対混沌とかディスプレとか輝度とか、わかってませんよね。」
「見栄を張りたいお年頃なんだよ。察してやんな。」
「そこ!うるさいわよ!!じゃあ、タイトルコールいくw」
「ゴチャマゼクエスト『異邦見聞録』麻帆良学園都市・外伝裏・・・」
『みなみけ!!』
「ぎゃー!先言われたってか誰!?今言ったの!!?」
「おう、あたしだぜ!!」
「あんたかカナ〜!!」
**********
+++エヴァンジェリンの場合+++
前々回、仕事を探しに行っていたエヴァンジェリンは。
「ていうか、私のこの見てくれで働けるところがあるわけなかろう。」
南家の居間でごろごろとくつろいでいた。当然、お茶と煎餅、TVはセットだ。
「ちょっとエヴァちゃん!人が勉強してる横でTV見ないでよ!!」
「うるさいぞアスナ。今み○さんの話を聞いているんだ、聞こえないじゃないか。」
アスナの苦情は完全無視である。ていうかこの世界にもいるのか、○のさん。
ちなみにエヴァンジェリンは仕事がなかったわけではない。「楽してできる」仕事がなかったのだ。
だから働かない。エヴァンジェリンは、この世界にいる間くつろぎ続ける気満々であった。
が、そうは問屋が卸さないのが、世の中の常である。
「そうかそうか。エヴァちゃんも一緒にお勉強がしたいのか。」
ここには彼女の天敵が一人いる。その名も、ザ・理不尽・オブ・理不尽、ロベルト東雲。
エヴァンジェリンはがばっと起きて言った。
「んな!?そんなわけがなかろう!私は別に働くのがめんどくさいわけじゃないぞ、仕事がないんだ仕事が!!」
「『楽してできる』仕事が、な。」
うぐ、と言葉に詰まるエヴァンジェリン。見透かされている。
「まあ、仕事をするのがいやなら仕方がない。代わりに勉強で許してやろう。」
「何でそうなるんだ!?私が勉強をする意味はないだろう!!」
何とか言い逃れようとするエヴァンジェリンだが、そこはロベルト。有無を言わせぬ一言を放つ。
「働かざるもの食うべからず。あのカナちゃんやアスナちゃんでさえ勉強という『仕事』をしているんだ。年長者としてどうなんだい?」
それを出されてはぐうの音も出ない。
だが、アスナと机を並べ勉強するのは、屈辱のきわみ。何せバカレッドである。
よってとる行動は。
「・・・もう一度仕事を探してくる。だがいいか、貴様に言われたからではないぞ!!年長者として懐の広いところを見せてやろうというだけだからな!!」
負け惜しみを残し、彼女は戸を開け出て行った。
後に残されるロベルトはくく、と笑いをこぼした。
「全く、エヴァちゃんらしいねぇ。」
「まるで子供ね〜。」
「アスナちゃんはアスナちゃんでアスナちゃんらしいな。そこ、全然違うぞ。」
「ゲッ!?」
ロベルトに啖呵を切って出てきてみたはいいが。
「つまらん。」
エヴァンジェリンは公園のベンチに座り足をブラブラさせていた。
そもそも、この世界の身分証明もまともに持たない彼らがまともに職にありつけるわけがない。
せいぜいが、コンビニ店員のバイトやネギの行っているような警備員が関の山である。
エヴァンジェリンはそれらを嫌った。何故私が人間相手にへこへこしたり、麻帆良を出た今さえも警備員の真似事などせねばならんのだ。
そう思っていた。
が、実際それ以外のバイトなど見つけようがない。先進国は旅人に冷たいのである。
このまま夜までブラブラしているのも馬鹿らしい。さてどうしたものか・・・。
「おーっす、エヴァンジェリン!!こんなとこで何やってんのー?」
そう考えていると、少し離れたところから聞きなれたバカ声が聞こえた。
見ればそこにカナがいた。あともう一人、知らない男。
「うるさいぞ馬鹿者。そんな大声出さずとも聞こえるわ。」
エヴァンジェリンは不機嫌そうに言った。が、別にカナのことは嫌いではなかった。
少々うるさくはあるが、その手の馬鹿をエヴァンジェリンは嫌いではない。
不機嫌なのは、ロベルトから追い出され、楽な仕事が見つからないことへの苛立ちである。
「南、この子は?」
この『子』という単語に眉を一瞬吊り上げるエヴァンジェリン。
「ああ、こいつはエヴァンジェリンっていって、今うちにいる居候の一人だよ。」
へぇ〜、と男。それから人懐っこい笑みを浮かべ
「こんにちは、俺は藤岡っていいます。よろしくね。」
そう言って手を出してきた。その口調が子供をあやすようだったのが癪に障った。
「小僧、私はこれでも貴様よりも長く生きているのだぞ?礼儀をわきまえんか。」
それで面食らった顔をする藤岡。
「おー、エヴァンジェリン怖っ。ご機嫌ななめ?」
「うるさいぞ馬鹿者。」
一蹴するエヴァンジェリン。どうやら、相当イライラがたまっているらしい。
そういえば、この世界に来てから彼女は呪いの枷を解かれているのだ。全盛期と同等の魔力を誇っている。
なのに、一度もその力を振るっていない。そのせいかもしれない。
閑話休題。早くエヴァンジェリンに居場所を与えてやらないと、街中で魔法を使いそうな勢いである。
「そうそう、今日焼肉やるから人いっぱい呼んでるからな。エヴァンジェリンも早く帰ってこないと肉なくなるぞ。」
「・・・私が食い物に釣られるように見えるのか?」
こくんと、カナは首を縦に振った。
プチ。イライラしていたエヴァンジェリンの最後の堤防を崩したのは、カナだった。
「ふざけるなー!!」
その後エヴァンジェリンは無詠唱で魔法を放ちまくり、公園を氷付けにした。その後三人そろって全力ダッシュで逃げ出したのだった。
「ち、私としたことが・・・。」
「ひゅ〜、びっくりしたー・・・。」
「な、何だったんだ今の?」
エヴァンジェリンは自戒し、カナは意外と平静であった。藤岡は今起こったことが理解できず、錯乱しているようだった。
ちなみに、カナは別に魔法のことは知らない。「異世界人だしなんか特殊能力でも持ってんじゃないの?」程度の認識だ。
「急に暴れだすなよな〜。何でそんなにイライラしてんだ?」
カナの言葉に、苦虫を噛み潰したような表情でエヴァンジェリンが言う。
「・・・ロベルトのやつに追い出されてな。『働かざるもの食うべからず』とか言い出しおって・・・。全く、やつは誰の従者か理解しているのか!?」
自分の従者のあまりの仕打ちに、吐き捨てるエヴァンジェリン。だが忘れてはいけない。それはあくまで『仮初』なのだ。
「つまり、エヴァンジェリンは仕事がないからイライラしてるってことか?」
「・・・身も蓋もない言い方をすればそうだ。」
バカに難しい話をしても仕方ない。そう割り切り、エヴァンジェリンは肯定した。
そこでカナ。あの劇画調スマイルで悪巧みをする。
「それならさ、ちょっとあたしの話に乗らないか?」
それに何か感じ、エヴァンジェリンはぴくりと眉をはねた。
「ほう、聞かせろ。いったい何をたくらんでいる?」
「ふっふっふ、聞いて驚きなさるなよ?エヴァンジェリンさん。」
ごにょごにょごにょごにょ。
カナの耳打ちに、次第に表情をカナと同じくしていくエヴァンジェリン。
「く、くっくっくっく・・・なるほど、それはいいな。よし、いいだろう、乗ってやる。」
「やりぃ!そうこなくっちゃぁ!!」
そして二人。夕日を背に高らかに笑う。
「はっはっはっはっは、見てろよロベルト!この私の恐ろしさを思い知らせてやるぞ!!」
エヴァンジェリンは何事か、夕日に向かって誓うのだった。
そして翌日。
「それではこれより、マコちゃんを可愛くしようの会をとりおこなう!!」
カナが高らかに宣言した。
ちなみに、今ここに集結しているのはカナ、内田、マコちゃんことマコト、そしてエヴァンジェリン。
当然ロベルトとアスナもいるが。
「本日は特別講師としてエヴァンジェリン先生をお招きしております!!」
「ふん。」
カナの紹介を受け、エヴァンジェリンが不機嫌そうに鼻をならす。が、その表情は実に楽しそうだ。
ちなみに、内田とマコちゃんは昨日の焼肉パーティですでにエヴァンジェリンと面識がある。
律儀にパチパチと拍手をする内田&マコちゃん。
「それではエヴァンジェリン先生、よろしくお願いします。」
「ふん、いいだろう。
可愛さの基本、それはまず・・・服装だ!!」
びし、と指を突きつけて宣言するエヴァンジェリン。その指先にいるマコちゃんの服装は、黄色のワンピースだ。
「その服も決して悪くはないが・・・貴様には冒険が足りん!!」
「ぼ、冒険?」
困惑気に返すマコちゃん。それに力説するエヴァンジェリン。
「そうだ!!ワンピース、それは女性の服としては可愛らしいものだろうだが!!無難すぎる!!
真に可愛いものというのはややもすれば一般から引かれるぐらいの冒険が必要なのだ!!そこで!!」
いったん言葉を切り、どこからともなく一着の服を取り出すエヴァンジェリン。
ヒラヒラのたくさんついた黒い服。
そう、彼女がもっとも好んで着る服、ゴスロリである。
「この私が夜なべしてこのゴスロリ服を用意してやった!!ありがたく思え。」
「昨日遅くまでなんかやってると思ったら、んなことしてたんかい。」
ロベルトが突っ込みを入れるが、エヴァンジェリンは華麗にスルー。
「さあ、この服を身に着けるがいい。そしてその持って生まれたポテンシャルを最大限に活かすのだ!!」
「え、ええ!?でも私、こんな服着たことないし。」
マコちゃんの言葉遣いは前回ネギに指摘を受けたことでだいぶ女っぽくなっている。そのためマコちゃんっぽくないかもしれませんが、ご了承ください。
だが有無を言わせないエヴァンジェリン。
「カナ、内田。手伝ってやれ。」
『ラジャー!!』
エヴァンジェリンの号令一下、マコちゃんをひん剥きゴスロリを着せる内田とカナ。
悲鳴を上げながらマコちゃんは着せ替えられてしまった。
「う、うう、恥ずかしいよぅ・・・。」
「何を言う、似合っているではないか。」
恥ずかしそうに顔を伏せるマコちゃんだが、エヴァンジェリンはそう言った。
それで少し嬉しそうにする愛すべきアホの子、マコちゃん。
「それでは次だ。可愛さの秘訣その2は・・・化粧だ!!」
またまたずびし、とマコちゃんに指を突きつけるエヴァンジェリン。
「元々の可愛らしさという資質は当然あってしかるべきだ。だが!化粧とはそれに磨きをかけるものだ!!
もって生まれたものに胡坐をかくのではなく、それを磨く努力をしろ!!」
「え、で、でも、化粧なんて・・・」
そして再び
「よし、カナ、内田。やれ。」
有無を言わせずマコちゃんに化粧を施す。
元々の可愛らしさに加えリップを塗ったマコちゃんは少し大人っぽく見え、可愛いお姉さんといった感じに見えた。
もしネギの手によって間違った方向へ誘導されていなければ、男としての尊厳は完膚なきまでに叩きのめされていただろうが。
「私の目に狂いはなかったな。」
「ノリノリだな、エヴァちゃん。」
「ていうか勉強してるそばで騒がないでよ!気が散るでしょ!!」
ロベルトとアスナから突っ込みの声があがるが、エヴァンジェリンはなお無視する。
「そして最後に・・・髪型だ!!とは言ってもその短さでは色々といじくることはできまい。
そこで!!私がこの特注のエクステを用意した!!これは装着者の髪質・色と同化することで自然な髪を演出するという代物だ。やれ、下僕ども。」
もはやマコちゃんの反応も待たずに、二人に命令する。下僕と言われていることにも突っ込まずにマコちゃんにエクステを装着するカナと内田。
そしてここに、ちょっと大人風味のゴスロリを着たロングヘアーのマコちゃんが誕生した。
「ははは、実に似合っているぞ!すばらしい!!」
それを見てご満悦のエヴァンジェリン。マコちゃんは顔を朱に染めて照れていた。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。真祖の吸血鬼にして齢600を越える大魔女である彼女だが、その見た目どおり可愛いものは大好きなのだ。
それを自分の手でプロデュースしたのだ。気分がよくなるのも自然なことだ。
「は〜、よぉやるわ・・・。」
一方、外野で見学しているロベルトは呆れたため息をついていた。
ちなみに、彼はマコちゃんの本当の性別に気がついている。超直感である。
それゆえ、このつぶやきを漏らしたのだ。
だが、その瞬間エヴァンジェリンの目がぎらりと光った。
「何を言ってるんだロベルト。お前もやるんだぞ。」
それから、ロベルト・アスナ・内田・マコちゃんの4人は、きっかり5秒停止した。
そして時は動き出す。
『はぁ!?』
4人の声は見事にハモった。
「ちょぉ待てや!!俺がそれやる必然性があるか!?」
もっともな抗議である。だがエヴァンジェリンは不敵に笑み。
「必然性があるかないかではない。私がやれと言っているのだ。マスターの言うことが聞けぬというのか?」
「当たり前だ!!それにマスターっつっても『仮の』だろが。俺はやんないね!!」
ロベルトが言い切る。だがそれを聞き、エヴァンジェリンはわざとらしく大きなため息をつき。
「やれやれ、貴様がそこまで小さな人間だとは思わなかったぞ。」
「・・・何ぃ?」
眉をぴくりと上げ反応するロベルト。エヴァンジェリンは内心笑いながら心でつぶやいた。
フィッシュ、と。
「たかだか女装程度を嫌がるとはな。そう言えば貴様は演じ手でもあったな。所詮は女装もできぬその程度の演じ手だということか。」
「ほっほぉ〜う。」
ピクピク、と眉を不機嫌そうに吊り上げるロベルト。それはロベルトNGワード集の一つにも数えられている言葉であった。
同時に、こういう場面で使うには劇的な効果を発揮する言葉でもある。
「言ってくれるじゃねーか、エヴァンジェリン。俺を小物呼ばわりするかこの野郎。」
「そう言ったつもりだが、わからなかったか?」
その瞬間、ブチンという音が響いた気がした。
「上等だコラァ!!女装でも何でもしてやろうじゃねーか!!」
ロベルトは頭に血が上っていて気づかなかったが、このときのエヴァンジェリンの顔は愉悦に満ちていたのだった。
「はぁ〜。」
「以外だったな〜。」
「ここまで似合うとはね〜。」
「にしてもエヴァちゃん、よくこの身長にあったゴスロリ服なんか用意したわね〜。」
口々に感想を言うマコちゃん、カナ、内田、アスナ。その視線の先には。
マコちゃんと同じくゴスロリ服に身を包み、化粧を施され、エクステを装着しロングヘアーとなった身長175cmがいた。
ちなみに体勢は○| ̄|_である。
「やっちまった・・・。」
「ははは、よく似合ってるではないか、ロベルト。」
言わずもがな、ロベルトである。エヴァンジェリンは実にご満悦である。もっとも、先ほどとは意味が違うが。
しかし、ロベルトがこの服が似合っていないかというと、そんなことはなかった。
元々女顔のせいで、マコちゃん同様化粧もロングヘアーも似合っている。
そして、体は男にしてはやわらかい印象のラインを持っているため、ゴスロリ服も十分合っている。
無論、男的な体毛は見える部分は全て脱毛されている。エヴァンジェリンが魔法で凍結粉砕したのだが。
まあ、彼には『情報修正』という特性があるため、一日もしないで再生することだろうが。
ともかく、似合っていないわけではない。では何故ロベルトがこんなにも凹んでいるのか。
男性諸君ならばきっとわかってくれるだろう。完全な女装というものは、男にとって大切な何かに多大なダメージを与えるのだ。
マコちゃんのように覚醒してしまえば話は別だろうが。
そんなわけで、ロベルトの自己嫌悪は進む。
そして事態は彼にとってさらに悪化する。
「ただいま〜。」
玄関からハルカの声がした。同時にピシ、とロベルトが固まるのが皆の目に見て取れた。
そしてそれを意地悪そうに見るエヴァンジェリン。彼女は内心思っていた。
――私のことを無碍に扱ったその報い、今こそ受けるがいい。
彼女はこれから起こることを待ちきれない笑いを浮かべていた。
だが、そこでただやり込められるロベルトではない。
彼はこの最悪とも言える状況下で意識を反転させていた。最悪だからこそ、冷静になっていたのだ。
――毒を食らわば皿まで。
そして彼の意識は演じ手としてのそれへとシフトする。
がちゃり、とリビングのドアが開く。
ハルカの目に見慣れない二人が飛び込んできた。否、見慣れているはずだが、あまりに知っている姿とかけ離れているため、見慣れないものに見えたのだが。
「あら、新しいお友達かしら。」
「ハルカさん!!私です!!」
両手を万歳にして主張するマコちゃん。その声で、ハルカはその正体に気づく。
「あら、マコちゃんだったの?気づかなかったわ、何だかいつもより可愛くて大人っぽくなってるから。」
「そ、そうですか?えへへ・・・。」
ハルカにほめられ、喜ぶマコちゃん。
元々マコトがマコちゃんになったのは、ハルカに一目惚れしそれをチアキに悟られたがため南家出入り禁止をくらい、何とか南家に入るためだったのだ。
もっとも、今ではその手段が目的へとすり替わっている節があるが。
そしてハルカの目線が問題の人物へと移動する。
その人物はいつの間にか正座をしていた。なんと説明したらいいかうろたえる内田、アスナ。面白そうに見るカナ。
そしてエヴァンジェリンは、何か空気がおかしいと眉をひそめた。
――何故こいつは慌てていない?
そんな風に皆に見守られながら、その人物は一礼した。
「初めまして。私、エヴァンジェリンさんの友人のクリスティーヌ剛田と言います。」
偽名を名乗る。所作が女性だった。声まで変えて、完璧な女性を演じたのだ。
その人物――ロベルトは、知らぬものが見たら女性にしか見えない笑顔を見せた。
「あ、ご丁寧にどうも。南家の長女のハルカです。」
ハルカはつられて正座し、自己紹介をしながら礼をする。
エヴァンジェリンは驚愕していた。まさかこんな手に出てくるとは!!
彼女としては、ロベルトがハルカに女装姿を見られて慌てるのを楽しみにしていたのだ。だが、これでは予定と全く違う。
内心歯噛みする彼女をよそに、ハルカとロベルト――『クリスティーヌ』の話は進んでいく。
曰く、『クリスティーヌ』はエヴァンジェリンが公園で一人ぶらぶらしているときに出会った。
曰く、ゴスロリで趣味が一致し、意気投合した。
曰く、服を譲渡するので遊びに来ないかと言われ、ここに来た。
とんだでっちあげストーリーを瞬時に構築していく様は、流石というか。
「もう、そういうことなら言ってくれればよかったのに、エヴァちゃん。」
ハルカがエヴァンジェリンに話を振る。同時に、ロベルトが一瞬だけ鷹のように鋭い目つきで見てきた。
話をあわせろ、と。それを断ればどうなるか、目に見えるほどの殺気だった。
「あ、ああ。すまなかったなハルカ。しかし何分急だったものでな。」
殺気に気圧されるように、言葉を搾り出すエヴァンジェリン。
「お構いなく。私もそろそろ帰りますから。あまり長居してもご迷惑でしょうし。」
殺気を一瞬で引っ込め、微笑みを浮かべながらハルカに言う『クリスティーヌ』。
「そうですか。何のお構いもできなくてすみません・・・。」
「どうかお気になさらずに。それでは、私は失礼しますね。」
そう言ってしずしずと立ち上がる『クリスティーヌ』。
「また遊びに来てくださいね。」
「ええ、いずれまた。それでは、お邪魔しました。」
いつの間にか玄関に靴まで用意し――恐らく召喚を使ったのだろう――南家を後にする『クリスティーヌ』。
「きれいな人だったわねー。・・・あれ?アスナちゃん、ロベルトさんはどうしたの?」
「え、あ、いやその!!何か用事があるとかでさっき外に行きました!!」
咄嗟にごまかすアスナ。それからすぐに
「ただいまー。」
ロベルトの声がした。リビングの扉を開けて入ってきた彼は、普段どおりの姿形であった。
そしてその手にはジュースやら何やらが入ったビニール袋。
「お帰りなさい、どこに行ってたんですか?」
「ちょいとスーパーまでジュース買いに。チアキちゃんの炭酸が切れそうだっただろ?」
「ああ、ごめんなさい。私が行くつもりだったんですけど。」
「いいっていいって、気にすんなよ。じゃ、悪ぃんだけどこれしまってくれるかな、ハルカちゃん。」
そう言ってハルカにビニール袋を渡すロベルト。それでハルカはキッチンに引っ込んだ。
「さて。」
ロベルトの底冷えするような声がリビングに浸透した。それで身をこわばらせる全員。
そして、地震が起きたようにがたがたと身を震わすエヴァンジェリン。
「随分おいたがすぎたな、エヴァちゃん。」
振り返るロベルト。その目が何故か輝きを失っており非常に怖い。
「ま、待て!!元はと言えばマスターをちっとも敬わぬお前が」
「言い訳は聞かない。・・・反省の色が見えないところを見ると、お仕置きが必要みたいだな。」
有無を言わせぬロベルト。
「騒ぎを起こすとハルカが来るぞ!!それでもいいのか!?」
「解放。『封絶』。」
ロベルトがつぶやくと、あたりの景色が色をなくしていった。そしてそれにあわせるようにして顔を真っ青にするエヴァンジェリン。
封絶――要約すれば存在を切り離す結界である。これによってどんなに騒いでもハルカはこないわけである。
そしてポケットから一枚のカードを取り出し。
「来れ。」
唱える。同時に、カードが消えロベルトの両の手に一本ずつ包丁サイズの刃が握られる。
「ちょ、おま!?」
「混沌解放・・・。」
言葉とともに、刃が一気に日本刀サイズまで大きくなる。
そして。
「ア〜ッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」
「ひいいいぃぃぃぃぃ〜〜〜〜!!」
ロベルトの哄笑とエヴァンジェリンの悲鳴が封絶の中に響いた。
そしてそれを見て、がたがたと震える4人の子供達。ロベルトはわざと彼らを封絶の中に入れたのだ。
エヴァンジェリンのようなことを考えないように。
こうしてエヴァンジェリンのたくらみは潰え、彼女は今までどおり職を探すことになるのだった。
だが、彼女は諦めたわけではない。またいつの日か、行動を起こす日が来るだろう。
ロベルトに、どちらが上なのかわからせるために。
「私は諦めたわけではないぞ!!首を洗って待っているがいい、ロベルト!!」
エヴァンジェリンの誓いの叫びは、青空に空しく吸い込まれていった。
みなみけ面子空気。手抜きって言うな。
補足:『封絶』は「灼眼のシャナ」のとは仕様が違います。性質としてはリリカルの封時結界に近いかも。
ちなみに、封絶のランクは5と意外と高め(性質が性質なのでね)。
ロベルトのアーティファクトの名前・性質はまたいずれ。
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