2008/10/04

そして天啓が降りてきたので書いた





小ネタシリーズ第一弾。
ちなみに、これを書かなければ昨日の時点で『みなみけ』アップできた。
何やってんだ俺。




お題:剛剣士・スバル=スカイバーグを単身『藍蘭島』に放置してみた おう、皆!元気にしてるか!? 俺は『グランドダッシャー・アキラ』の真のヒーロー、スバル=スカイバーグ様(13)だ!! 俺の活躍が見れなくて寂しい思いをしてきただろう。だが、今回の主役は俺様だぜ!! くそ生意気なアキラぼーずもいねえ、冷血灼熱男のレクイエムもいねぇ!!妹のカデナがいないのがちと寂しいが。 ともかく!!俺、主役!!ひゃっほー!! さあ、はりきっていk(ざばー) スバルは おおなみに のまれてしまった! ・・・うん? どうやら気絶してたみたいだ。確か俺は何故か大波に飲まれて、そのまま気を失っちまったんだったか。俺としたことが不覚だぜ!! で、何だか真っ暗だな。夜か? ・・・あれ?俺、目開けてたっけ?ああ、閉じてたわ。そりゃ暗いわけだ。 さて、目を開けて現状確認・・・てあら?目が開かねーぞ!? 何だこりゃ!?俺は何か呪いでも受けちまったか!? 俺はこのまま、目を開けられずに朽ち果てちまうのか・・・!? いや、俺は諦めない!諦めなければ道は開かれるってじいさんも言ってたし!! 燃え上がれ俺の星の魂ー!! 「くわぁ!!」 「うわびっくりしたぁ!!」 渾身の力をもってして目を開いた俺の目の前には、一人の女の子がいた。見た感じ8〜9歳ってとこか? てか驚かしちまったな。悪いことしたか。 むくりと体を起こして周りを見てみる。すると、俺の倒れていたところには大量の昆布があった。なるほど、あれのせいで目が開かなかったのか。 だが俺は勝った!!ビバ、俺!! 「・・・と、感慨にふけるのはいいとして、大丈夫だったか嬢ちゃん。」 俺はその女の子に手を伸ばしながら聞く。するとそいつは頬を膨らましながら。 「むー、私は嬢ちゃんなんて名前じゃないよ。ゆきの!!」 「おお、そいつは悪かったな、ゆきの。」 見てみればゆきのは、俺が見たこともない格好をしていた。 「ゆきのに感謝してよねー。私がたかたかに乗ってあなたを発見してなかったら、今もまだ海の上だったんだからね。」 「すると、ゆきのが俺のことを助けてくれたのか。サンキューな!!」 ぐっと、最高の笑顔でサムズアップする俺。 「えっへん!!」 そしてゆきのも胸を張った。 「それはともかくとして、あなたのことをおばばに報告しなくちゃ。新しい住人になるんだから・・・?」 「俺はここに住む気はねえぞ・・・って、どうした?」 ゆきのが何故か俺のことをじろじろ見てくる。ふ、いい男だからってそんなに見つめるなよ。 「あなた・・・ひょっとして男?」 「・・・て見てわかるだろ!!」 思わずこけかけ、俺は絶叫した。 だがゆきのは、どうやら俺が男であるということが大層の驚きだったようだ。 そして俺の手を引っつかみ。 「こうしちゃいられないわ!急いでおばばのところに連れて行かなくちゃ!!」 「お、おいなんだよ?俺が男じゃなんかまずいのか??」 「説明は後!!お〜い、たかたかー!!」 ゆきのが空に向かって叫ぶと、一羽の巨大な鷹が現れた。 「うお、なんじゃこりゃ!?」 思わず剣を抜きかける俺。だがゆきのが親しげにその鷹に接したので、やめた。 「この子はたかたか。あたしの友達の一人だよ。」 「・・・すげぇ、ゆきのはビーストマスターだったのか。」 しかもこの若さで凄腕のビーストマスターのようだ。まさにあんびりーばぼー。 「びーす・・・?なんかよくわからないけど、早くたかたかに乗って!!」 「おう。」 そして俺は鷹の背に乗る。うん、なんか変な感じだ。 鷹は俺が背に乗ったのを確認すると、空高く舞い上がった。 「うおおおおおお!!凄ええええ!!」 思わずテンション上がってきたぜー!! 「ちょ、暴れないでよ!落ちちゃうよ!!」 そうやってゆきのに抑えられながら、俺は空の散歩を満喫した。 ところ変わって、人里。 ここはこの島――『藍蘭島』の長老である『おばば』の家らしい。 「ふーむ・・・。まさか今年になって男が二人も流れ着くとは・・・。」 何だか深い感慨をこめ、そのばあさんはつぶやいた。 てかこのばあさん・・・何歳だ?何か感じられる雰囲気がただ事ではないんだが。 そして何故俺はこんなにも注目を集めているのだろうか? は、そうか!やはり皆俺のかっこよさに見ほれているんだな、そうなんだな!? そうだ、ここにはあのやたらと可愛がられるチビ助もいなければすかした面でキャーキャー言われる銀髪冷血野郎もいない。 つまり、俺のかっこよさに皆が気づいてくれるのだ!! 「あー、何か勝手に盛り上がってるところ悪いんじゃが、そういうわけではないぞ。」 ずるっとこける俺。てか今、俺思ってること口に出してた? 「もろにな。」 「うわ、恥ず!!」 思わず赤面。ばあさんはその空気を払うかのように一つ咳払いをし。 「単純なことじゃよ。この島には、お主を含め二人しか男がいないんじゃ。」 とてつもない事実を口にしやがった。 「な、何だってー!!?」 俺は驚きの叫びをあげる。何てこった・・・!! 「そうじゃ、だから」 「つまりここで俺の格好いいところ見せれば・・・俺がヒーローじゃないか!!」 「は?」 そう、ここには女しかいないなら。他にヒーローたる人物はいない! 今まで散々涙を飲んできた。たとえめちゃ強い敵がいても、とどめは必ずアキラかレクイエムだった。 そしてヘレンはアキラに、うちのカデナはレクイエムにねぎらいの言葉をかけ。 人々は皆アキラとレクイエムを賞賛した!!たとえ俺がどんなに苦しい思いをしても!! 「だが今は違う!ここには俺しかいない!つまり、ヒーローになるのは俺だああああ!!」 「・・・何だか激しくしょうもないことを言っとる気がするが・・・。まあ、落ち着け。」 びす。 「う。」 ばたり。 「ば・・・ばばあ、何しやがった・・・。」 「何、ちょいと脱力のつぼを押してやっただけじゃ。 話を戻すぞぃ。この島には男が不足しとる。このまま手をこまねいておったら、わしらは滅びるのみじゃ。 そこで、お主らに妻を取ってもらい、子を成してほしいわけじゃ。」 ・・・なんだって? がばっと起きる俺。 「ほぅ、頑丈な童よの。」 「そんなん聞き入れられっかよ。俺はやだね。他を当たってくんな。」 立ち上がり、びしっと言ってやった。だがばあさんは薄ら笑いをたたえ 「ほっほっほ。それが出来れば苦労はせんわ。この島は四方を大渦で囲まれておる。そのため外界とは完全に途絶されておる。 もちろん、お主がこの島を抜け出すことも不可能じゃ。どの道、お主に選択肢はないと思うがの。」 ・・・このばばあ。俺は奥歯をギリとかみ締めた。 「何をそんなに嫌がる必要がある?労せずして連れ合いを得られるのじゃぞ?嬉しくないのか?」 「嬉しいわけがねえだろ!そういうもんはな、自分で決めるもんだ。他人様が勝手に決めた未来を享受するだけなんて、俺は死んでもごめんだね!!」 俺は力強く宣言してやった。そう、俺は絶対にそれだけは認めるわけにはいかない。 だがばあさんは高らかに笑った。 「ほんに気の強い童じゃの。行人とは大違いじゃ。お主、名は?」 「スバル。俺の名前はスバル=スカイバーグだ。しっかり覚えとけこのくそばばあ。」 それだけ言うと、俺はばあさんに背を向けた。これ以上ここで話をしていたくなかった。 「気が変わったら戻ってくるといい。いい娘を紹介してやるぞ。」 「誰が!!」 そう言って、俺はばあさんの家を後にした。 家を出ると、何人もの視線が突き刺さってきた。やはり先ほどのくそばばあ発言はやりすぎだったか。皆視線で俺を非難している。 ・・・はあ、すっかり冷めちまったな。せっかくヒーローになれると思ったのに。 頭の後ろに手を組み、ぶらぶらと ぎゅ。 歩き始めたところで後ろから服を引っ張られた。振り返れば、それはゆきのだった。 「おう、どうしたゆきの。俺と話してると、お前まで嫌われっぞ。」 だがゆきのは俺をじっと見たまま――何か泣きそうなんですけど。 「スバル、島を出てっちゃうの?」 「ああ、俺はそのつもりだぜ。おっと、無理だとか言うなよ?この世に無理なことなんて何一つないんだからな。 じいさんがいつも言ってたぜ。『不可能・不存在を証明することがこの世で一番難しい』ってな。」 そう言うと、ゆきのはいっそう悲しそうに顔を伏せ―― 「ておおい!?泣くなよ?泣くんじゃないぞ??ここでお前泣いたら俺完璧悪者じゃん!?」 慌てる俺。泣く子と風邪には勝てん。 だがゆきのはきっと顔を上げ。 「なら、ゆきのも手伝う!!」 と叫んだ。 そして俺たちは再び、海岸へとやってきた。 「それで、どうやって帰る気なの? 前に行人――ああ、この島にいる男の子なんだけど、行人がこの島を出ようとしたときは、ぼーとを使ったけど、ことごとく渦に負けてたよ。」 ふふん、俺にはボートも筏もいらねえ・・・あ、いや大渦出たら必要になるけど。 「俺には――こいつがある。」 言いながら俺は、背中の大剣――星剣『セブンスター』を抜き放った。 「剣?そんなものでどうすんのよ。」 こうすんだよ!! 豪!!と烈風を巻き起こし、剣を降りぬく。そして剣が水面に触れた途端。 ごばあ!!と音を立て、海が割れた。流石俺!! 「とまあ、こいつで大渦抜けてからボートに乗りゃあ大丈夫だろ・・・てゆきの?どうした?目が点になってるぞ。」 「・・・すっご〜い!!」 どうやらゆきのは俺の勇姿に感動したようだ。ふ、それほどでもあるけど。 「スバルって馬鹿力なんだね!!」 ずるっ。思わずこけかけた。あのさ、ゆきの。もうちょいましな言い方してくれよ。 「まあ、それはともかくとしてだ。実は問題がある。」 「問題?」 「ああ、見ろ。」 俺は言って、俺が割った海を指す。ゆきのもそちらを見る。 俺たちが見ている前で、海は滝のように海底を流し、次第に元の姿に戻っていった。 「あ。」 「そう、俺は海が元に戻る前に大渦を抜けなきゃいけない。でも俺はそこまで足が速くない。さて、何か妙案ない?」 これがあの神速坊主だったら何の苦も無く向こうにたどり着くんだろうなー、と考えても仕方ないことを考えてみる。 むむむむむ〜、と、ゆきのは眉を寄せて考えた。 待つことしばし。 「そうだ、いいこと考えた!お〜い、くまくまー!!」 ゆきのはぽんっと手を打つと、遠くで見ていた熊に声をかけた。どうやらゆきのの使役するビーストの一体のようだ。 「この子はくまくまっていうんだけど、凄い力持ちなの。だから、海を割ったらくまくまに全力で投げてもらって、それから走ればいいと思うよ!!」 「なるほど、そいつはいいアイデアだな!!」 よし、手段は決まった!頼んだぜ、クマ公!! 「む〜、クマ公じゃなくてくまくまだよー!!」 「ははは、悪ぃ悪ぃ、ゆきの、それとくまくま。」 「そんじゃ行くぞ・・・。」 俺は再び剣を大上段に構え。 「どっっっっっっせい!!!!」 再び海を割る。そして。 「くまくま!!」 「ぐる〜!!」 俺はすぐさまくまくまにつかんでもらい、ボートともども投げられた。 「うおおおおぉぉぉぉ!!」 俺は思わず雄たけびを上げていた。そして着地。 その後は全力ダッシュだ!! 走る。ただひたすら走る。海が元の姿に戻り、大渦が復活する前に越えられるように。 だが、呪うべきは俺の脚の遅さか。海は早くも元の形を取り戻しつつあった。 それでも終着点はまだ程遠い。俺は舌打ちをした。 「スバル!!もう無理だよ、戻ってきて!!」 ゆきのが声をからして叫んでいる。ああ、無理かもな。俺にもそんくらいはわかる。 だけどな。 「俺は・・・諦めるわけにはいかねーんだよぉぉぉぉぉおおおお!!」 自分の道は自分で切り拓くために。これは俺だけの人生なんだ。 たとえ大自然が相手だろうと俺の邪魔はさせねえ!! 気がつくと、目の前が真っ暗だった。 あれ?俺ってどうしたんだっけ?確か海を割って走ってたけど、その途中で海が元に戻って。 そうか俺は死んだのか。けど、悔いはないさ。俺の道を行けたんだからな。 ああ、けどそしたらカデナは一人ぼっちになっちまう。あいつ、泣くかな。・・・泣くだろうな。あいつはああ見えて、本当は熱い心を持ってるから。 こんな情けない兄貴でごめんな。 「・・・だよ・・・バル!!!」 あれ?この声・・・最近聞いたような。 「目を・・・て、・・・てば!!」 この声は・・・ゆきのか。 「やだよ・・・こんなの!!」 ゆきのには結構世話になったな。けど、最後の最後まで迷惑かけちったか? ・・・何かそれ、嫌だな。 「起きてよ、スバル!!」 そうだ!何を勝手に死んでるんだ俺!!起きろ!! 死すら俺の邪魔はさせねえ!! 俺の道は、俺が決めるんだ!!!! 「チェストーーーーー!!!」 『うわぁ!?』「ぷー!?」 がばっと起き上がった俺に、三人の男女+一匹の畜生が驚きの声を上げる。 一人は、言わずもがな。ゆきの。 「ううううわぁぁぁああん、スバルーーーー!!」 起き上がった俺に抱きついてわんわん泣き出した。 「HAHAHA、心配かけたなゆきの、だが俺はこの通りPIN☆PINしてるぜ!!」 きらっと白い歯を見せて元気なところを見せる。が、ゆきのに殴られた。何故に? 「あ、あはは・・・。とにかく、大事がなくて一安心だよ。」 そう言ったのは、見知らぬ女。・・・乳でけーな。見たとこ俺と同じ=カデナと同じぐらいの歳なのに・・・。 「私はすず。あなたはスバル・・・であってるよね。」 「おうよ。俺様こそスバル=スカイバーグ様だぜ!!」 とりあえず、自己紹介しておく。 そして残った一人。頭に豚っぽい畜生を乗せている少年。 「すずは君の事を助けてくれたんだよ。あ、僕は東方院行人。こっちの丸いのはとんかつ。」 「ぷー!!」 男――行人はそう言った。 「そうか。すず、サンキューな!!」 びしっと、最高の笑顔でサムズアップ。 「にゃはは、当たり前のことをしただけだよ〜。」 すずは照れながらそう言った。 「それにしても、まさかあんな方法で海を渡ろうとするなんてねー。僕も鍛えてあれできるようにならなきゃ!!」 行人は先ほどの俺の勇姿を見て感動しているようだ。ふ、もっと褒め称えろ!! ・・・だがな行人。 「やめとけよ。明らかにお前には向いてないし、そんな貧相な体じゃ絶対無理だね。」 現実を突きつけてやる。世の中、中途半端に目指すと後が辛いのだ。これは俺なりの優しさだ。 だけど俺は何か地雷らしきものを踏んでしまったらしい。 「・・・絶対無理?」 行人が何故かごごごごご、と炎を背負い始めた。 「い、行人?」 すずが冷や汗垂らしながらなだめようとしている。 「何だ、行人どうかしたのか?」 「行人は『絶対無理』って言葉を聞くと、怒っちゃうんだよ!!」 ひそひそとゆきのが教えてくれた。ああ、NGワードだったのね。 「絶対無理なことなんてないんだー!!」 そして行人が爆発した。どこからともなく木刀を取り出し。 「行人!?」「あ、スバル危ない!!」 俺に切りかかってきた。・・・遅いな。 俺は軽くかわし、足払いをかけてやった。当然行人は倒れる。 「く、この!!」 立ち上がり、行人は再び切りかかってくる。だが、何度やっても同じだ。 俺とこいつには、天と地ほどの実戦経験の差があるし、何より俺はもっと速い剣を知っている。 行人の斬撃をかわし、突撃をかわし、袈裟切りをかわし―― その瞬間、俺は驚いた。 先ほどまで袈裟切りの軌道を描いていた木刀は、一瞬で軌道を変え、横薙ぎになったのだ。 俺は鞘に入ったままの星剣でそれをガードする。 ――こいつ。 「あわわわわ、行人やめてー!!」 「ス、スバルも!早く行人に謝って!!」 「ぷ、ぷー!!」 すずとゆきのととんかつは俺たちのいさかいを止めようとする。 だが、対極的に俺の口は笑みの形になっていた。 「お前、意外と面白いな・・・。」 だったら。 俺は鞘に入ったままの大剣をぶんと一振りし。 「とことんまで楽しまなきゃ嘘だよなぁ!!」 そう宣言した。 そして行人も口を笑みの形にしたような気がする。 「うおおおぉぉぉぉ!!」 一直線に突っ込んでくる行人。だが、ただ突っ込んでくるだけでは俺を倒せないぞ!! 行人はその勢いのまま、全力の大上段を振り下ろす。だが、俺は当然それをガードする。 そして行人は、体を少し後ろに――!? これは!! 「斬釘截鉄!!」 万感の思いと裂帛の気合を乗せて、行人はがら空きになった俺の首に突きを繰り出してきた。 これがお前の必殺技か!! 「へへへ・・・お前、やっぱり意外と面白いな。」 「・・・ははは、そっちこそ。」 俺たちはほとんどゼロの距離で会話をしていた。 誰もが行人の攻撃への対応は不可能と思っただろう。行人も『決まった!!』という顔をしていた。 だが、俺はその瞬間に剣から右手を離し、その空いた右手で木刀を白刃取りしたのだ。 言うは簡単そうだが、実際にはめちゃくちゃ難しい。正直、心臓が止まるかと思ったぜ。 だが成功した。 けど、お前の必殺技。見事だったぜ。 「じゃあ、こっちの番だな。」 「・・・お手柔らかに頼むよ。」 さあ、そいつはお前次第だね。 俺たちは距離をとり。 「大震撃!!」 そしてその次の一瞬で俺は、地面に剣を突き立てた。途端、地面が揺れる。 当然行人はバランスを崩し。 ずん!! 「かは・・・!!」 そのすきに距離を詰めた俺は、拳を一発お見舞いする。 そしてもう片方の手で持った剣を、体を軸に回転させる。 これぞ俺の一人コンビネーション技の一つ!! 「ダブルブレイク!!」 巨大な剣の一撃を受けて、行人はまるで小さな虫のように弾かれていった。 そして、岩壁に激突する。 「行人ー!!」 すずが慌ててそれに駆け寄っていくが、恐らく行人は気絶していることだろう。 俺は手に持った剣を背中に背負いなおす。そして、行人の方を見る。 すると驚いたことに、行人は起き上がろうとしていた。 ――そうか、最後のあれ。後ろに飛んだな。 そうすることで、衝撃をある程度緩和したのだろう。あくまで『ある程度』だが。 本当に意外と面白いやつだ。 「前言撤回するぜ、行人。」 俺はまっすぐに行人を見て、言った。 「お前ならいつかできる。ていうかやれ!さもなきゃ俺が許さん!!」 「・・・あいたた、全く、変わり身が早いなぁ・・・。」 苦笑しながらそう答える行人。ふむ、随分余裕そうじゃないか。 「第二ラウンド、行っとく?」 「流石にそれは・・・。それにほら。」 行人が俺の後ろを指差す。何だ? 俺は振り向き。 ばちん!ぐあ、星が見えた!!まさに俺、星の子供!! 「あ、ごめん・・・。じゃなくて!もー、スバルやりすぎだよー!行人もこんなにぼろぼろにしちゃってー!!」 それは怒ったゆきのだった。どうやらゆきのは俺と行人が戦ったのがいたく気に入らないようだな。 だけどそこは許してもらわなきゃな。だってさ。 「ゆきの。男にゃあ、拳で語り合うことも必要なんだぜ。じいさんも言ってたぜ、『万の言葉を連ねるより、一度の行動で示せ』ってさ。」 「それ、多分違う意味だと思う・・・。」 ん、すずもそう思うか。実は俺もだ。 その後、行人はすずの家へ帰っていった。どうやらあいつはすずの家に住んでいるらしい。 うん、あいつとはまた剣を交えたいものだ。 さて、俺の寝床はどうしようか。 「あ、それならうちに来なよ!うちなら大所帯だから、一人増えても平気だよ!!」 と、ゆきのが言ったので、俺はそれに従うことにした。というかそれ以外に選択肢ねぇし。 そして俺はゆきのの家に着いた。 「ただいまー!!」 「お邪魔するぜー!!」 戸を開けながらそう言うと、奥から幼女が一人出てきた。 「あらあら、ゆきのちゃんお帰りなさい・・・。あら?そっちの子が新しく島に流れ着いたっていう?」 「おう、スバル=スカイバーグだ!よろしくな!!」 そう言って、俺は右手を差し出した。そしてその幼女は「あら、こちらこそ♪」と言ってその手を取った。 「それで、スバルはうちに泊まることになったから。いいよね、おかーさん。」 はい? 「ええ、一向に構わないわよー。」 「えへへ!やったー!!」 おかーさん?マザーってことですかい?誰が? 目の前の幼女? 「あ、自己紹介が遅れちゃったわね。ゆきのの母のかがみです。よろしくね、スバル君。」 「・・・ありえねえええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」 俺はこの世の摩訶不思議に大絶叫をあげた。 その後俺は、ゆきのの作ったご飯に舌鼓を打ち(結構美味かった)ながら、何故かビーストたちが一緒の座敷について飯を食ってることに驚いたり。 ビーストたちが布団を並べてたり。 何故か皆で枕投げしたり。 ともかくこの後は、俺は驚きの連続だった。 そして賑やかに騒いだ後、ようやく就寝となった。 何の因果でこの島に流れ着いたかはわからねえけど。 悪くないと思った。
あ、あれ?俺一話完結で書いたつもりだったのに・・・? 後編もしくは中編へ続く。 ※スバル=スカイバーグ  ロベルトのオリジナル小説『グランドダッシャー・アキラ』で登場するはずだったキャラクター。  スバル登場前の段階で公開を停止してしまったため、現在このサイトでは出番がない不遇のキャラ。  同様の不遇キャラに妹のカデナ=スカイバーグがいる、ちなみに妹は黒魔導士。



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